今回は、
2011年7月8日(金)小島慶子キラ☆キラ
3時台のコラムのコーナー コラ☆コラ-町山智浩さんを起こしたいと思います。
アメリカで3年以上メディアを騒がせ、評決されて
「ケーシー・アンソニー裁判」について語っています。
音声はこちらから
小島慶子(以下、小島)
町山さんこんにちは。
町山智浩(以下、町山)
はい、町山です。よろしくお願いします。
小島
オープニングでちょっと話したんですけど、ついに町山さんオススメの
「素晴らしき哉、人生!」をこのほど見まして、良い映画だな感じました。
町山
なんで今ですか・・?
小島
手に入ったからなんとなく・・。
季節的には違うけれど・・。
水道橋博士(以下、博士)
かなり季節外れなんですけどね。
小島
やっぱり町山さんの言うことに間違いはないな!と思った次第でございます。
本当好きがあれば見ようと思ってね、いっぱい積んではあるんですけど。
今日は映画の話じゃないんですよね?
町山
はい、今日はですね。アメリカで一番世間を騒がせている事件の話を
しなきゃならないなと思ったんで。はい。
小島
どういう事件なんですか?
町山
これはまぁ、事件の名前は「ケーシー・アンソニー裁判」
というのが行われていたんですね。
7月5日にフロリダ州オーランド、ディズニーランドと
ユニバーサルスタジオがあるところですけど、
オーランドで3年間ずっと事件が起こってから
全米が注目していた殺人事件の被告の
ケーシー・アンソニーという25歳の女性に
陪審員の評決が下されたんですね。
で、この事件を説明すると、
3年前の2008年7月15日フロリダの警察にケーシーという
当時22歳の女性の娘のケイリーちゃん2歳の女の子が
行方不明になったっていう通報が
警察にあったんですね。非常に愛くるしい女の子ですけれども・・。
その通報したのはケーシーっていう
22歳のシングルマザーのお母さんなんですね。
で、孫に合わせてもらえないと思って、1ヶ月くらい家出しちゃっていない、と。
小島
おばあちゃんから通報があったんだ。
町山
そうです、おばあちゃんから。
で、おばあちゃんの車を盗んで行方不明になってて、
ケーシーって人は無職のはずで、親と同居してたんですけど
そのまま行方不明になってて孫娘もいないと。
「どうしたの?」と娘に聞いたら、「誘拐された」って言ったんですって、
ケイリーちゃん2歳が。
警察を呼んだら、「私は実は働いてるんだ」とケーシーがね。
「私はユニバーサルスタジオ遊園地で
イベントプランナーとして働いているんですが、
勤めに出るときに、上司に紹介された
乳母の人のアパートに行って娘を預けて、
帰りにそのアパートに行ったら行方不明になってる」と。
娘と乳母が両方ともいなくなってる、と。
それが1ヶ月前だってケーシーが言ったので、
警察が「1ヶ月間どうしてたんだ?」って聞いたら、
「1ヶ月間、娘を自分で捜してた」って言うんですね。
そのケーシーが。
とりあえず、乳母のいるアパートに行こうと警察と一緒に行ったんですよ。
じゃあ、その部屋誰も住んでなくて、
「いつから住んでないんだ?」って大家に聞いたら、
「半年も前からずっと空き部屋です」って言われたんですね。
小島
じゃあ、嘘だったのかな?
町山
その乳母どこ行っちゃったんだ?と。
わからないから、その乳母を紹介してくれた
ユニバーサルスタジオ遊園地の上司に会いに行こうということになって、
行ったんですけども、そしたら遊園地の人が入れてくれないんですよ。
どうしてか?っていうと、
「この人ここで働いてないから」って言われちゃったんですよ。
小島
あーー、嘘だったんだ。
町山
で、ケーシーって人は実は2年前にクビになったことがわかって。
一応、働いてたんですけど、2年間も無職だったんですよ、実は。
それで、警察官が「全部嘘じゃないか!」ということで、
このケーシーを逮捕しました。
それで行方不明になったお母さんから盗んだ形になった車がですね、
発見されたんですけど。自動車の中からすごい異臭がするんですね。
警察がトランクを開けたら、トランクには何もなかったんですけれども、
髪の毛が発見されまして、DNA検査したらその行方不明になってる
ケイリーちゃんその2歳の子のものと一致したんですね。
警察はケイリーちゃんを捜索するためにマスコミに公表して、
これがまたすごかったんですけども、
ものすごい何万人も動員する感じでですね。
もうオーランドじゅう探し回ったんですよ。ケイリーちゃんを捜せ!って感じで。
ヘリコプターも飛ばして、テレビでも中継してですね。
民間の人までみんな協力して、
その行方不明になっているケイリーちゃんを捜したんです。
でも全然出てこないんですね。
それと同時にケーシーっていう22歳のシングルマザーの実態が
だんだん明らかになったんですけど、
それをずっとテレビで放送したんですね。アメリカではCNNで特に。
もう嫌なのに、CNNって見なきゃなんないじゃないですか?アメリカにいると。
で見ると、コレばっかりやってるんですよ。
なんていうかね、あんまり楽しいニュースではないですよね。
2歳の女の子が行方不明になってて危ないっていう状況なんですけど、
3年間、ずっとこの事件ばっかりだったんですよ。3年間ですよ。
でね、最初はまずケーシーっていう22歳の母親が
「このケイリーって子は誰がお父さんなの?」って聞かれても、
「わからない」と答えたんですね。
どうしてかっていうと、不特定多数の男とセックスしてたからなんですよ。
小島
本当にわからないんですね。
町山
一人、絶対の恋人だと思っていた男が「あの子は俺の娘だ」って言ったんですけど、
DNA検査したら違ってて。
片っ端からDNA検査したんですね、ケーシーが付き合ってた男。
全然一致しないんですよ。で、わからないと父親が。
しかも娘が行方不明になったっていう1年前、このケーシーが何してたかというと、
近くのナイトクラブでですね、「セクシーボディコンテスト」っていうのに参加して
Hなコスプレで遊び呆けてた写真とか出て来るんですね。
これはおかしいじゃないか!と。
お前が言ってる行方不明になった直後、4日後ぐらいなんですけど。
「なんでお前こんなとこで裸で遊んでんの?」と。
全然楽しそうなんだけど!「捜してる」って言ったけども、
あなたの知り合いで誰も「娘が行方不明で捜してる」って誰も知らないよ!と
しかも、その娘が行方不明になった2週間後ぐらいにですね、
タトゥー屋さんにいって刺青を掘ってるんですね。
その刺青の言葉がイタリア語で「美しい人生 素晴らしい人生」って
刺青を急に掘ってるんですよ。このケーシーって母親は。
娘が行方不明になった後にですよ!!直後にですよ!
それがどんどん報道されていって、
「この女は一体何者なのか?」って事になったいったんですね。アメリカでは。
それから半年くらいケイリーちゃんが見つからなくてですね。
で、12月にですねこのアンソニー家の近所でですね、
ガスのメーターの検査員がですね、
黒いビニール袋に入った女の子の白骨を発見したんですよ。
ケイリーちゃんだったんですけども。
それでもうアメリカのマスコミは騒然としてですね。
検察はこういう結論を下したんですけれども。
このケーシーという母親はとにかく自分が遊びたかったと
娘が邪魔になったのでクロロホルムで眠らせたんじゃないかと。
車のトランクからクロロホルムが発見されたんですね。
死体にガムテープの後が残ってたんで、ガムテープで口をふさいで、
ゴミ袋に入れて放置して、車のトランクに入れたまま。
で、そのまま死んだんだろうということで
殺人罪及び児童虐待で起訴しました。
これで裁判が始まったのが1ヶ月くらい前なんですけど、
1ヶ月くらいずっと裁判の中継でしたね。
アメリカは裁判を中継できるんですよ、テレビで。
小島
ずっと生中継で出来るんですね。
町山
ずっとやってましたねぇ。はい。
その中でケーシーは「私は嘘をついてました」と。
「娘はプールに落ちて死んだんです」って言ったんですね。
小島
急にまた違う話ですね。
町山
違う話なんですよ。「誘拐とか嘘でした」と。
それは事故になるんですけども、
警察に言わなかったのは何故かというと、
「お父さんが怖かったんで、言えなくて遺体を隠してたんです」
って言ったんですね。
小島
お父さんって自分(ケーシー)のお父さんが怖かったっていうこと?
町山
「どうしてお父さんが怖いんだ?」って言ったら、
「私はちっちゃい頃からお父さんにレイプされ続けてたからです」って
言い出したんですよ、急に。
で、お父さんはショックで拳銃で自殺を図ったんですね。
博士
えっ!!この証言で!
町山
そう。死ななかったんですけどね。
ただね、ケーシーがそんなこと言っても、みんな信じなかったんですよ。
嘘に嘘をずっと重ねてきたから。
娘殺したんじゃないか?って言われて父親にレイプされたって
父親に濡れ衣を着せるかたちになってるんですね。
あまりにもひどいということで、世間はほとんど信じないんですけれども、
結局ですね、7月5日に陪審が評決を下したんですけども、
「無罪」でした。
博士
えーーーーーーーーーーーー。
えーーーーーーーー。
町山
これはねまたね、アメリカじゅう騒然としてて、
デクスターっていうねテレビドラマご存じですか?
日本で結構人気もあるんですけど、
デクスターってのは連続殺人鬼なんですけども。
殺人鬼しか殺さない殺人鬼が主人公なんですよ。
正義の殺人鬼の話なんですね。
もう「デクスターを呼べ!!」みたいな話になってるんですよ。
博士
デクスターにやっつけてもらえと。
町山
必殺仕掛人・仕置人みたいなもんなんでね。
小島
陪審員の人たちは何で結果無罪っていうふうに決めたんですかね?
町山
これは、「証拠不十分」ですね。
これはね陪審の判断は正しいと思ってるんですけど。
っていうのは、死因がわからないんですよ。
死因がわからないから、
殺害方法もわからないし死亡日時も推定できないんですよ。
博士
白骨化してるから・・。
町山
これでは全く、物的証拠と言いますか立証できないんですよ。殺人自体を。
これは「疑わしきは罰せず」と。わかんないものは罰せないと。
罪刑法定主義によればですね、これは無罪なんですね。
小島
殺人に関しては、無罪なんですね。
町山
無罪ですよね。
ただこれは、陪審員たちも有罪にしたかったけどどうしようもない
ということで無罪にしてるんですね。
小島
有罪にするにしたって裁判上ちゃんと正当な理由がないとね。
感情だけで決めましたって出来ないですよね。
町山
無理ですよ。結構みんなそれもわかってて、
無罪はしょうがないだろうってアメリカ国民の半分はそう思ってるんですけども。
非常に悔しいということで、
今アメリカでは動いているのは、
たぶんこれ日本でもやったらいいと思うんですけども、
子供が行方不明になったり死んだ場合は
それをすぐに警察に通報しなければ、
その母親も有罪になる法律を作るべきだと。
博士
なるほど。1ヶ月猶予があったんだもんな・・。
町山
これはもう、早急に作るべきだってことになって、
そっちに向かってますね。これは日本にもあるべきだと思うんですけども。
ただねこれで非常に問題になっているのはね、
ケーシーは来週釈放されるんですけれども、
この人、億万長者になるだろうって言われてます。
博士
ひえーーー。
小島
なんで?なんで?
町山
まずね、既にABCテレビっていうテレビ局があるんですけども
テレビで放送する時にケイリーちゃんが
生前に生きてた頃のホームビデオの映像を
独占で流す権利を独占するために
ケーシーにすでに20万ドルも払ってるんですよ。
博士
(当時)1700万・・。
町山
そう、昔のアルバムとかビデオをABCテレビだけが放送できるんですね。
約1700万円以上(当時)払ってるんですよ。
おそらくこれで釈放されて出てきて独占インタビューってことになったら
もう5000万円以上でしょ。
今度、語り下ろしの本を出版することになったら、
また5000万円から1億円でしょ。
で、既に映画化しようっていう話まで出てきてるんですけども。
アメリカって何でも映画化しちゃいますからね。
トワイライトで有名なクリステン・スチュワートに
主演させようとか言ってるんですよ。
このケーシーを演じさせようとか言ってて。
映画化されたら、されたでまた億入るでしょ?
小島
司法では無罪とされた人なわけだから・・。
町山
殺人者の場合は、
殺人者が本書いても印税が入らないようになってるんですよ、法律で。
博士
この方、無罪だから?
町山
入るんですよ!ちゃんと。
これは大変な問題になって、「これはどういう事なんだ!」と。
でも、それを防ぐ方法はどこにもないんですね。
小島
釈然としないですね。
釈然としなくて、怒りとかの理由であってもこうやって
興味を持てば持つほどケーシーさんっていう人の価値が
上がってちゃう訳なんですもんね。
町山
そうなんですよ。無視するのが一番なんですけどね。
とりあえず弁護士が発表したところによると、
もうすでに仕事のオファーは来ていると。
無罪が発表されて1時間後か2時間後に来た最初のオファーは、
「ビビット」ていう会社から来たそうです。
これアメリカのアダルトビデオの最大手なんですよ。
このケーシーという母親でアダルトビデオを撮りたいと。
弁護士が正式に認めてます。
博士
見たいかね?そんなの・・。
町山
わからない!!でも、昔ちんちん切られた人がいるんですよ奥さんに。
浮気ばっかりしていて。切られた後、縫ってつけたんですけども。
その後の最初の仕事が本番ポルノだったんですよ。
そういう国なんでね(笑)
博士
いやその、犯罪の背景を考えればね。うーん・・。
小島
悪趣味にも程があるなと思いますけどね。
いやいやいや、3年以上にわたってケイリーちゃん行方不明事件っていう
ずっと続いてたんですね。
町山さんからご覧になって、
なんでそんなに関心を呼んだんだと思います?
町山
これはね、「メディア・サーカス」ってアメリカで言われてるんですけども。
CNNを中心にこういうのをやると、奥さんたちが昼間テレビを見るから、
そればっかりやるんですね。
CNNがやるとそのABCが「負けてたまるか!」っていって
ビデオの放送権を取るわけですよ、お金で。
小島
そうなると、ひどい事件があると「何故こうなってしまったのか?」
「どんな仕組みがあれば防げるのか?」とは全然別の、
みんなが見たがってるからとりあえず流しといてということで
3年以上維持されてたんですね。
町山
競争でしたね、完全に。競争が激化してエスカレートしたって感じでした。
小島
挙げ句ね、判決出た後、
今度色んなビジネスにバーッとまた繋がっていっちゃうわけなんですね。
町山
そうなんですよ。
こういうのを「チェックブックジャーナリズム」ってアメリカで言うんですけど
小切手を持って、いきなり犯人の所に行って、小切手を目の前で書いて
「いくらやるから、全部よこせ!」ってみたいなことやるんですよね。
「小切手ジャーナリズム」って言われてるんですけど。
これの最悪のパターンになっちゃったと。
小島
なかなか言葉も出ませんね。司法上は無罪の方なんですけど・・。
博士
再審とかされないんですか?
町山
いやーー、これまた虐待とか死体遺棄とかでね
訴えたりすることもあるんでしょうけども。
検察側はね。
小島
殺人に関しては無罪とはいえ、自分の娘が行方不明になってる間に
随分奔放な暮らしだったっていうのを聞くとなかなかねぇ、ちょっと・・。
町山
本当に先週の歌(面影ラッキーホール)のような世界が
アメリカにはあるというね。
日本の田舎だけじゃないというのが、良く分かったんですけどね。
小島
これからまた大騒ぎになっていくというわけですね。
町山
映画とかなったらね。
今回限りで無視して、こういう人は儲けさせない方がいいかもしれないですね。
これで、「子供が行方不明の時は、通報しろ!」っていう法律が立法されることが
少しの救いかなって思いました。