今回は、荒川強啓デイ・キャッチ内
「メキキの聞き耳」より2011年11月10日放送分
サンキュータツオさんによる「あるマニアックな音の研究論文」です。
音声は、こちらから
荒川強啓(以下、 強啓)
今日は面白論文のメキキ
お笑いコンビ・米粒写経のサンキュータツオさんです。
こんばんは。
サンキュータツオ(以下、タツオ)
ごきげんよう、サンキュータツオです。
よろしくお願いします。
強啓
今日は変わったものを持ってきたんじゃないの?
タツオ
いやー、今日も自信満々でお送り致します!
今日は、「コーヒーカップとスプーンの接触音の音程変化」塚本浩司先生の
2007年の論文をご紹介し対と思いますけれども。
ねぇ!先程杉浦さんがマニアックな音とおっしゃってましたけど、
コーヒーカップとスプーンの接触音これですよ!
こっからインスタントコーヒー入れて、お湯入れました、かき混ぜたこの音!
カップとスプーンのぶつかり合う、溶かす・・。
強啓
だから、何?(笑)
タツオ
高度な研究ですよ!
で、ちょっと強啓さん衝撃の事実なんですけど、
こっから聞いて下さい。気づきましたか?
混ぜ初めと最後を比べるとどんどん音が高くなってないですか?
強啓
それだって、ずっとお湯が増していくんだもん。
そりゃ高くなるでしょ?
タツオ
お湯が増していきます?いや、違いますよ。
お湯を全部入れきって、回した後ですよ!
音が高くなってる。
杉浦舞
強く回してるとかじゃなくて?
タツオ
強く回してるとかじゃないです!
っていう「あれ?最後の方、音ちょっと高くなってないですか?」っていう論文なんです。
強啓
飲み口の方を叩き出したんじゃないの?
タツオ
いや、違うんですよ。
で、実はこの塚本先生は現在千葉県の高校の先生なんですけども、
1992年に教え子の奥山さんという女子生徒からですね、
インスタントコーヒーの粉をお湯を注いで混ぜると音程が変わると聞いて、
「それは思い込みだろ!」「気のせいでしょ!君。」
「取っ手のとこ叩きすぎたんじゃないの?」と
実際にやってみたら、「あれ?確かにちょっと高くなってるかもしれない!」っていうことで、
それから塚本先生と生徒の奥山さんはですね実験を繰り返すことになるんですよ。
ちょっとときめきません?先生と女子高生の実験を繰り返す・・。
フラスコでコーヒー淹れたりとか・・。
強啓
まぁいいよ、それは。
話そっち持ってちゃうと、僕そっちに乗るよ!(笑)
タツオ
これ感覚ではなくて本当に音が高くなってることを証明するために
サウンドモニターソフトを使って、音をパソコンに取り込んだものを
フーリエ変換して周波数特性を測定した、と。
いきなり理系的な言葉遣いになってますけども。
まぁ実際に「あれ?ちょっと高くなってねぇ?」じゃなくて、
パソコンでちゃんと音をチェックしたんですね。
そしたら最初は6千ヘルツくらいだったのが、
最後には、1万ヘルツを超える音域になっていると、
つまり時間が経つに連れて本当に音が高くなっているという結果が得られたんですね。
「なんだこの現象!」っていうなったわけですよ。
で、「待て待て、これだけだったらインスタントコーヒーで
音が高くなると結論づけるのはまだ早いぞ!」と。
これはカップにお湯を入れたことで温度変化が原因じゃないの?と思って、
今度はインスタントコーヒー入れず、お湯だけを入れて
コーヒーカップをかき混ぜてみました。
データ取りました、フーリエ変換した、音の高さは変わらない!
「どういうこと!」というわけで、
じゃじゃじゃじゃあ、コーヒー以外の粉末飲料を溶かしても、
音程変化しますよね?
というわけで、コーヒー用のクリームパウダーありますよね、
あれ入れてお湯に溶かしてかき混ぜてみました。
フーリエ変換した、音程変わったんです!!
「え、クリームパウダーいけんの?じゃあココアはどう?ココアは!」
ココアも音変わったんですよ!最後の方。
「なんだこれ!」っていうふうになったわけですね。
じゃあこれは粉末の飲料だけに起こる現象なのか、
それとも全ての味の付くものだったらそうなるのか?
「じゃあ、紅茶のティーバッグで試してみようか?」って
ティーバッグで試したところ、音程に変化がありません!!
なんだこれ!と。
じゃあ粉の飲料、じゃあただの粉でもいいの?
砂糖、塩を入れて試してみました。
そうなるとどうなると思います?
何も起こらなかったんです。
強啓
泡だ!!
タツオ
おお、ちょっと強啓くん良いとこにたどり着いたんじゃないか?これ!!
そうなんです!これは粉末飲料というのがポイントで、
ここまで来て塚本先生と奥山さんある仮説にたどり着きました。
インスタント飲料の粉末に含まれる気泡、つまり泡!
これが原因じゃないか?っていう仮説を立てましたよ。
ちょっと強啓くん、研究者の職に就いた方が良いんじゃないかな?今すぐ。
強啓
そうかもしれない(笑)
タツオ
で、空気がカップとスプーンの摩擦音を吸収して、
元々高い音なのを低くしてるんじゃないかと。
勝手に高くなってるんじゃなくて、最初から低くなってるんじゃないかと
考えついたんです。
で、これを証明するためにどうしたらいいのか?と考えました。
「じゃあ別に粉末じゃなくてもいいなと、コーラってどうなの?」
コーラをグラスに普通に入れるんじゃなくてコーヒーカップに入れて、
スプーンでかき混ぜてみましたと、そうなると・・。
音が高くなったんですよ!!
そうなんですよ!
で、シュワシュワする入浴剤ならどうだ!と。
もう飲み物ですらない入浴剤どうか?と。
ちょっと良いお湯でいきましょうと。音が高くなったんです!
ということは、気泡が原因だということがここに明らかに
なったわけなんですけども、こんな身近に物理ミステリーが!!
どうでしょう?このどうでも良さ!!ね。
こっからでも衝撃なんです。
この結論に至った後、なんと海外に同じ疑問にチャレンジして
気泡が原因だという結論にたどり着いた論文を発見したんですよ。
やられてたんですよ!!
これは69年にカリフォルニア大学の3人が休憩時間に
コーヒーを飲みながら、この現象に気づいて実験を重ね、
最後はコーラではなく、ビールで実験していたんですね。
だからちゃんとビールでも音が高くなったと。
で、塚本先生いまはこのコーヒーの音の謎をですね、
高校の授業で生徒さんたちに証明させる授業教材にしてると。
何故このコーヒーを入れるとコーヒーカップの音が高くなるのか?
っていうことを授業でやってるんだと。
そるなると、この論文はこの実験で生徒がどういう反応するかを
盛り込んだ論文になってるわけですね。
なんでこれは物理教育という教材研究の論文に掲載されていると。
生徒の感想がまた面白くて、「いや、面白かった!」とか、
「身近なのに気づいてなかった」っていうのが大半なんですけど、
中にはですね、「いやー、僕は粒子が原因だと思っていたのに、
泡が原因なんて意外だった。」っていうレベル高い感想が寄せられたりとかして、
これ物理オタクなんじゃないか?とかそういう感想なども載ってまして。
いや、この論文に接してみて身近な疑問を解明する楽しさを
教えてくれると同時に、問いを立てるっていうのは如何に難しいか?
日常に潜む謎を見つけることが一番難しいと教えてくれた論文でもありましたね。
そしてやっぱり残る、このどうでもいい感!っていうね。
強啓
どうでもいいところからでも、何か驚きの解明のとっかかりっていうのは、
これは大切な一歩なんだよ。
タツオ
そうですよね、これだけ実験を重ねて
今強啓さんも「泡が原因何じゃねえのか?」って言った通り、
同じ手続きを取ればみんな同じ結論にたどり着くのが学問の素晴らしさなんですね。
そしてそんなことより、コーヒーを如何に美味しく入れるか教えてくれ!
と思うんですが、それは藤岡弘、さんに聞いて下さい。
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