今回は、小島慶子キラ☆キラ2012年2月17日(金)放送分
水道橋博士さんのペラ☆ペラを起こしたいと思います。
音声はこちらから
水道橋博士(以下、博士)
さぁ今日のテーマは「どっちにする~?ザ・2択」なんですが、
世にある後継者問題っていうのは、最終的にはこのテーマだと思いますが。
まぁ誰を後継者にするか?跡目にするか?っていうのはね、
古今東西大問題でして。
下町の中小企業でも老舗の旅館でもヤクザ映画でも
そして海老名家でも、この番組のキラ☆キラでも
実に選択たるや悩ましいところでして。
ましてや独裁国家の後継者ともなると兄弟のうち
誰を後継者にするのか?この二者択一は血みどろの綱引きがあるんでしょう。
その北朝鮮の後継者争いについて今話題になってる本がですね、こちら
「父・金正日と私 金正男独占告白」という本なんですけど。
小島慶子(以下、小島)
話題ですよね。
本屋さんでも平積みになってますけど。
博士
売れてるんですよー。
著者は東京新聞編集委員の五味洋治記者なんですが、
日本では初版3万部でスタートしたんですが既に4刷15万部までいってて、
日本だけでなく海外でも大注目で、韓国での翻訳出版も決定したと。
で、米PLAYBOY誌は本の抜粋を掲載し、英語版でも電子書籍が出る予定だと。
これ読みました?
小島
読んでない!
博士
すごい話題になってますよね。
僕も「是非!」と言われて、「どうかな?」と思ったんですが・・。
まぁさてこの本はざっくりと言えばですね、
日本の一新聞記者がですね、2004年以来
後継者問題に揺れる独裁者の長男と150通のメールをやりとりし、
更に7時間のロングインタビューをしたという、世界唯一スクープの一冊なんですね。
でもちろんメールの相手は正真正銘の金正男本人で・・
小島
もう表紙にどーんと写真が!
博士
はい、杉作J太郎さんのそっくりさんではないんですけど・・。
どうですか?小島さんの金正男のイメージはどうですかね?
小島
あのほら・・かつて偽造パスポートで入国をしようとして、
ディズニーランドに行こうと思ったみたいなことがあったでしょ?
その印象が強いので・・。
博士
マタギみたいなベストを着て・・。
小島
まぁちょっとファッションも独特でね・・。
博士
であの田中真紀子に国外退去させられたと・・。
なんか世界中を旅歩く放蕩息子・・。
小島
ちょっとね・・そういうこうダメ息子っぽいイメージ・・。
博士
いい歳して東京ディズニーランドっていうのもなんかねぇ、
くまのプーさんみたいな・・。
イメージとして「馬鹿息子」的なイメージ・・。
小島
切れ者とかそういうふうなイメージじゃないですよね?
博士
しかしですね、この本を読むとそのイメージがガラリと覆されるんですね。
特にですね、この金正男のリベラルな世界観はですね、
むしろ西欧諸国側と変わらず自由主義的なんですね。
で、現在の北朝鮮の体制に批判的な姿も浮き彫りになっていくんです。
まずこの金正男の兄弟の関係をおさらいしておきますと、
石田純一ファミリーと松原千明の関係を説明するほどちょっと複雑な感じが・・。
で、金正日総書記に3人の息子がいて、
長男が正男、次男が正哲、そして三男が正恩、でこの三男が後継者になったんですけども。
このうち長男の正男氏はですね、金正日第2夫人の子供で、
次男・金正哲と三男・金正恩は最も敬愛を受けた第4夫人の子なんですね。
だから異母兄弟の間柄なんですね。
正男の母親、第2夫人はですね元・映画俳優で金正日の親友の兄と結婚していた過去があり、
そこからの略奪愛結婚で生まれた子なのでちょっと儒教の倫理観では
正男氏は長男でありながら後継者としてはパージされたのではないか?という説もあって、
それ故に小さい頃から一般的にずっと公にされてなかったので、
9歳の時に海外留学に出されていて、18歳までジュネーブで育ってるんですね。
それが逆にですね、この本の中で驚くのが、
英語・ロシア語・フランス語、そして片言の日本語という語学力を持ってて、
資本主義の言論の自由とかを肌でずっと感じてきてるんですね。
ですから自由主義国の価値観というのを既に持ってるんです。
ではなぜ一記者とですね、メール交換が始まったか?不思議に思いません?
小島
え?取材きっかけも変だしね。
博士
これ五味記者が東京新聞特派員として中国にいた2004年9月25日に
北京空港のロビーで日朝協議に参加する北朝鮮代表のコメントを
取ろうと出待ちをしてたんですね。
そしたらどっかで見たことのある小太りが到着口からボディーガードもなしで
一人で歩いてきたんです。その一瞬、
「あれ?グレード義太夫さんかな?小堺一機かな?杉作J太郎かな?」と思ったんですけど・・
小島
思ってないでしょ!!!!
博士
ここは僕の描写です。
で半信半疑で「金正男氏ですか?」と話しかけると、「そうです」と認めたんですね。
そこで一方的に名刺を渡したんです、記者6人で。
2ヶ月経った12月にですね、五味記者はメールアドレスに
ハングルで書かれたメールが届いて、差出人が金正男だった。
で、五味記者が再びメールを返して返信が来る、これに返信したら返ってくる。
こうして往復書簡が始まったんですけど、その現場に6人いるうち5人の記者が
メルアド書いて名刺を差し出して、そのメルアドに一斉に送信されてるんですよ。
でも他の記者の4人たちは半信半疑で色々と質問をしつこく繰り返したのに対して、
この五味記者はハングル語の知識もあり、朝鮮半島の知識もあったので、
親身に慎重にメールを送って、その後こういう文通関係に繋がるんです。
小島
へぇーー。
博士
実に意外に思えるのが、この正男のメールの文面が
実に穏やかで紳士的で全然威圧的なところが無いんですね。
でもこれあまりに出来すぎて不安になりますよね?
これ出会い系だったら、「相手はネカマじゃねぇのか?」とか怪しむところなんです・・
この正男と見られる男はですね、
「共和国最高指導者の息子が、日本国の記者に送ることの出来ない理由は無いと思います。
そのように思ってしまうことによって、共和国と日本国両国間の不審の障壁が
更に高まってしまうというのが私の考えです。」
なんて送り返してくるんですよ。
だからもう一記者としてもうメロメロになると思うんですよね。
これ大スクープの取材源を世界でたった一人掴むわけですから。
だけれどもこのやりとりが始まって7通で終わってしまうんです。
2004年12月3日から7日まで7通のメールがやりとりされた後、
「今日で終わりにします」と突然の打ち切り宣言をされるんです。
これ例えて言えば、アダルト系のチャットですね、7日間のお試し無料サービスが
打ち切られたような感覚があると思うんです!
小島
その例えはいらないじゃないですかね・・。
博士
いらないですか!!
「いやいや、正男にあんな事やこんな事を聞きたかったのに!
今すぐ本契約にアクセス!!」みたいな
募る感じが分かるんです。
で、五味記者は7通のメールから3年後に文藝春秋にもう「ここで切れたな」と思って
2007年3月号にメールの内容を全訳して掲載したんです。
そしたら正男が文藝春秋のその記事を読んだらしく、
こっから突如メールがまた再開するんですよ。
そのタイミングは、メールの1ヶ月前に正恩が
正式に後継者と指名されたタイミングなんですよ。
ここから北朝鮮の三代世襲に対して正男の強い違和感が赤裸々に綴られたメールを
五味記者が受け取ることになるんですね。
「三代世襲は封建王朝時期を覗いて前例がない」とか
「社会主義に付合することもない三代世襲に最も否定的だった父」とか
もうこれちょっと世界的なスクープが次々出てわけですが。
このメールは誰かに監視されてるはずだし、
ましてや五味記者が記事にすることも、
書籍化することももう解ってるわけじゃないですか!
文藝春秋に出したわけですから。
だから正男にしてみれば意図的であるし、
世界に対してもメッセージになってるが、
自分が異母兄弟が後継者に選ばれた事に対する
釈然としない気持ちも露わになってくるわけですね。
小島
まぁこれは公表される前提でメールを出してるわけですよね。
博士
出してると思うんですよ。
で、正恩と正男というのは一度も会ったことがないということが
この本で明らかになるんですよね。
その後、二人はマカオと北京で3度面会してインタビューに至るんですけど、
これが文通しながら、距離感を測りつつ、どうしても会いたいというメールに
徐々に正男が反応していく下りがもうBLの世界というか、
一種のラブレターに思えるような・・。
「じゃあ会おうか!」っていう瞬間になるんですよ!
そこすごい読みどころがあるんです!!
色々と大震災に対してもすごく紳士的な追悼の意を表していたりですね、
読みどころはたくさんありますけれども。
あと面白かったところで言えば、日本に5回入国してて、
日本文化に小さい時から関心があって、
高倉健や真田広之の映画をよく見てたとかね、
第一ホテルが常宿でおでん屋に訪れたり、熱海の石亭の温泉が好きだったり、
赤坂のカラオケ屋で「とんぼ」を歌ってたり、
自分がギャグにされた特集のある「SPA!」を読んでたりする描写とか、
あとメールで一度だけ絵文字を使うところとかもあるんですよ。
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