哲学者・國分功一郎が語る「YOSHIKIの判断は正しかった!ヴィジュアル系が海外進出できた理由」

2013/06/28

Session-22 Versailles X JAPAN ヴィジュアル系 國分功一郎

t f B! P L
今回は、2013年5月20日放送「荻上チキ・Session-22」
「Session袋とじ」國分功一郎さんの回を起こします。


荻上
まずそもそもリスナーの中には「YOSHIKIって誰?」っていう人も
中にはいるかもしれない。どなたですか?YOSHIKIさんは。

國分
YOSHIKIさんっていう人はですね、X JAPANっていうバンドで
ドラムスとピアノを担当している人ですね。


荻上
もちろん曲もね。

國分
曲も作ってやったり、リーダーの人ですね。

荻上
そんなYOSHIKIさんの何の判断が正しかったんでしょうか?

國分
あっ、いきなりそこにいくんですか?
海外進出の話があったんですよね、X JAPAN
大変人気があって、それは90年代のはじめだったと思いますけど。

それを結局あのー上手く「このままじゃダメだ」と言って放棄するんですね。
その後バンド自体もこう・・解散しちゃっていっちゃうんですけれども。

その後、逆に海外のファンにX JAPANが発見されて
どんどんどんどん人気が出ていってついに世界ツアーとかが出来るようになっていくんですよね。

それだけじゃなくて、X JAPANは先鞭なんだけども。
今あるもっと下の世代のヴィジュアル系バンドっていうのは。

これまでの日本のロックバンドがなし得なかったような海外進出っていうのを
なしているんですね。
で、ものすごい人気なんですよ。

僕フランスに留学してたんで、そこを多少知ってるんですけど。
もうね僕なんか全然知らないようなヴィジュアル系バンドの歌とかをね
若いフランス人の大学生がね、カラオケ行って熱唱とかしてるの。

もうすごいんですよ!その浸透具合は!半端無いんですよ!
だから何だろ?これまで頑張って一所懸命「海外!海外!」とかって
けっこう思って来ましたよ、日本のロックバンドって。



まぁ多少はありますよね?あのー・・ラウドネスとがね
向こうでコンサートやってたとかあるんだけれども、
やっぱそこまでは浸透しなかったですよね?

で、この発見のプロセスが非常に面白いと思うんですよね。
ここに僕はなんか日本の文化とか日本で仕事をしている人たちが
海外に出て行くときのヒントがあるんじゃないのかな?ってちょっと思ってるんですよね。

荻上
でもその海外でね、ヴィジュアル系のファンが多いという話ってね
ちょっと前にNHKでやってて、もう番組終わったみたいですけど。
「東京カワイイTV」とかね、ああしたもので。


「日本のカワイイ文化」例えば原宿文化とかが海外でどう利用されているか?とかね
ジャニーズが海外でどう受容されているか?
そしてヴィジュアル系がどう受容されているか?っていうと、

日本のそれこそ原宿とかで受け入れられているようなある種のカルチャーというのが
より濃縮された形で変異した仕方で海外で受容されてるっていうものを、
この十数年間で随分進んで音楽の環境も変わりましたよね?

國分
変わりましたね。ヴィジュアル系はアジア圏でも非常に人気があるんですけども。
そっちの方はファンのことは知らないんですけども。
ヨーロッパのファンについて言うと、基本的にはオタクなんだよね。

南部
すごい納得しますけど。

國分
ヨーロッパのオタクがマンガとかもアニメとかも好きなんだけど、
ヴィジュアル系バンドとかX JAPANとか大好きなんですね。

で、やっぱ彼らを観ていると今まで彼らは本当に
生きづらさを感じていたんだろうなっていうか・・

俺がフランス居たときに君たちどこいたの?みたいな。
観たこと無い人がたくさんいて。
そういうやっぱね何かこうヨーロッパの・・

ヨーロッパって非常に大人用の社会っていうか・・
責任を持った、責任を受け入れられる大人として立派に生きていくのが人間ですみたいな
すごいそういう強い圧力がある社会、時にフランスなんかそうなんですけれども。

そこから何かズレちゃうような、
何かそれに耐えきれないっていうような若者たちが
日本の文化を観たときに

「あ、別に何か完全に大人にならなくてもいいんだ!」とか
「男だけど化粧とかしてワーッとか騒いでもいいんだ!」っていう
そこにものすごい開放感を見いだしてくるんです。

それがね僕、すげーいい話だな!と思うんですよね。

南部
すごい分かりますね。

荻上
まさにサブカルチャーでそれぞれの国の中でも
いろんなサブカルチャーはもちろんあるんだけど。

その国の中で受け入れられているロックミュージックとかは
おそらくその国の学校に行ってる人からするとモテるやつらの文化とか一般的なポップで

それより更に自分たちのことだけ分かる文化ってなると
日本のヴィジュアル系などと結びついたっていうことはあり得そうですよね。

國分
そうなんですよね。
やっぱヴィジュアル系ってこういうことを言うと怒られるかもしれないけど。
やっぱね、バカにされてたと思うんですね。それまでの硬派なロックファンからね。

「あんなの格好だけだろ」とかいう感じで。
で、そういう硬派なロックファンっていうのはある種の欧米・・
って言葉は僕はあまり好きじゃないんだけど、基本的にはアングロサクソン圏っていうのかな?
まぁイギリスとアメリカかな?

荻上
英語圏のメジャーシーンに殴り込みかけるか、かけられないかですかみたいな。

國分
そこらへんでアングロサクソン圏で基本的にロックの伝統っていうか
起源が作られたわけですよね?
そこにまぁ忠実な人たちだったわけですよね。

「ハードロックっていうのはこういうもんだ」とか
「ロックってこういうもんだ」とかね。


荻上
早弾きしてゴリゴリの音をかけて・・

國分
だから向こうの伝統を尊重する優等生的なマインドの持ち主で
その人たちからすればヴィジュアル系みたいなのはなんかふざけた不良がやってるみたいなね、
優等生が不良をバカにするみたいな、そういうもんだったと思うんですよ。

だけどその優等生たちは自分たちが信じている元々あった
そのオリジナルな伝統に従って「自分たちもあそこで一旗揚げたい」みたいに
思ってやってたけど、なんかあんまり上手くいかなかったと。

ところがそのなんか適当な格好してふざけてやって不良がやっているみたいなと
思われていたヴィジュアル系バンドが純粋に自分たちで楽しみながら音楽を
あういう格好してやっていたら向こうのファンに逆に発見されて
ものすごい勢いで拡がっていったっていうね。

だから、日本のものがなんか海外に進出して行くときの
ひとつのパターンなんだと思うんですよね、これね。

荻上
これね日本のものっていう地域性なのか?
日本の中のある種・・例えばなんだろう?

キャンプファイヤーを外側で観ていってしまう俺たちの音楽なんだ!みたいな
疎外感みたいなのが濃縮された感じっていうのと、
どっちが効いてるんだと思います?國分さんは?

國分
えっ?疎外感?

荻上
僕、ヴィジュアル系バンドの音楽を聴いたりするときとかですね
「ゴールデンボンバー」というバンドがありますよね?


通称「金爆」、ゴールデン、ボンバーだから「金爆」なんですけど
「金爆」の鬼龍院翔さんにインタビューした時ね、
「なんでヴィジュアル系やったのか?」っていう話になるわけですよ。

そしたら当然「モテないからだ」って話になるわけですね。
で、ヴィジュアル系バンドはやっぱり聞いてる奴もクラスの中でだいたい周辺の奴だし

その曲調もすごい内面的世界を歌っていて、モテない自分たちの場所なんだ!感と
ある種ライブ会場もそうだと。

それをある種装飾してくれるようなものなんだということで意気投合したわけですよ。
と言ったときに、やっぱり「日本独自の」というだけではなくて、

ある種のそういった「サブにいる自分」みたいなものを吸収する音楽だったからこそ
フランスとか他の国のサブにいるという自意識の人にも刺さったんじゃないか?と。

だから、ロックミュージシャンが海外にいるメジャーシーンに行こうとして
上手く行かなかったとしてもそれはシーンが
いまいちよく分からなかったりして世俗性が無かったと。

ただヴィジュアル系はそこらへんが上手くいってるんじゃないか?というような
仮説が自分の中にあるんですけど、どうですか?

國分
あのねまず、やっぱりかつての優等生的な硬派なロックファンっていうのは
ある意味で非常に海外に対して劣等感を持っていたと思うんですよね。
それって別にロックだけじゃなくてあらゆる分野でそうですよ。

僕のいる人文系の研究者集団だって、昔は非常に強く海外に対して劣等感を持っていて
「海外の研究では・・」「海外の最新の研究では・・」と
二言目には「海外では・・」「海外では・・」ってね。

向こうでなんかやるということに非常になんか
よく分からない劣等感を抱いたりしてたんですね。
で、音楽も多分そうだったんだと思うんですね。

そのような劣等感からは多分ヴィジュアル系は自由であったんだと思うんですよね。
ただ荻上さんがおっしゃったような心の中のねじれみたいなのはあったかもしれないですね。

ただひとつ面白いのは僕が高校生のときに行っていたX JAPANのコンサートは
女の子ばっかりだったんですよ。

南部
すごい女子に人気がありますよね。

國分
そうだいたい横って女の子が2人いて、
Xジャンプして僕にぶつかってくるみたいな。
で、良かったなみたいなね(笑)

荻上
90年代にでも、HIDEのライブとかGLAYのライブとか
LUNA SEAとかラルクとかいろんなライブ行っても
基本的に女子が多かったですね。


國分
でしょ!で、その女の子たちって「私の気持ちなんて誰も分かってくれないんだ」とかね
「HIDEしか分かってくれないんだ!」とか「YOSHIKIしか分かってくれないんだ!」
みたいに思ってる感じなんですよね。それはそれでいいんだけどさ。

最近はそういう女の子がいないんですよね。
最近のX JAPANのコンサートに行っても
ちょっと違うんですよファン層が。

南部
昔と変わったってこと?

國分
昔と変わった!

荻上
たとえば同窓会感みたいなのはありませんかね?

國分
そういうのもあるかもしれないし、なんていうのかな?

南部
どう違うんですか?

國分
男のファンが単純に増えてるし、
「私の気持ちを分かってくれるのはこの人たちだけ」みたいなファンがあまりいないですかね。

だからちょっと自分が心にねじれを抱えているときに
それを音楽を通じて解きほぐしながら生きていくっていうのが
ヴィジュアル系だけじゃなくていろいろあると思うんだけれども。

ちょっと最近ではもっと自由な感じがするんです。
だから僕はすごくいいな!と思って・・
まぁゴールデンボンバーなんてそれをもうやりまくってる感じなわけじゃない?

荻上
あれはバンドと呼んでいいかどうか問題とかもありますけど・・。
ヴィジュアル系へのある種のセルフパロディであったりするわけですよね。

國分
それはね、まぁ僕は本当ゴールデンボンバーも大好きですけど。

で、あとそんなに僕は詳しくないんだけど。
もう解散しちゃった「Versailles(ヴェルサイユ)」っていうバンドがあって。
もうね本当にやりすぎなんだよね。もう完全に中世のお姫様みたいな格好してるわけ。


南部
あ、はいはいはい!

國分
もうねだから、ヴィジュアル系をある路線で突き詰めるとそこに行くのは分かるんだけど。
もうお前らそこまでやるのかよ!みたいな感じで
そういうところは僕は大好きなんですけど。

しかも、Versailles(ヴェルサイユ)ね曲がすごくて演奏が超上手いんだよね。
ヴィジュアル系は格好だけだみたいに言われるんだけど、
演奏テクがすごい人がけっこう多くて。

X JAPANもやっぱりね、曲が難しいんですよ。
X JAPANのコンサート観てて面白いのは、
なんかHIDEとかがほとんど動かねえの、真剣に弾かないと間違えちゃうんですよ。

で、ジャーンって弾いて瞬間2拍くらい動けるときあると手とか動かしたりして
またすぐ戻って下向きながらずっーと真剣に弾いてるの。

だから意外と格好は派手なんだけど、
コンサート中はものすごい真剣に顔がもうなんていうのかな?
試験中みたいな顔しているのね、HIDEのコンサート中とかって。

途中でわーっとこう違う顔したりとかするんだけど、
あのものすごく集中してやってるっていうのも僕は
X JAPANは大好きだったんですよね。

荻上
逆に後期のほとんどピアノソロだけになったときの
ギターの出番がないときもね、逆に静止してますけどね。
ギターはね、やることないから。

今おっしゃっていたハードなヴィジュアル系のメイク路線っていうのは
例えば元々Gacktさんがいた「MALICE MIZER(マリスミゼル)」とかもそうですけど。


やっぱりその演劇みたいにその空間をものすごく劇調で見せると。
その劇調にも西洋風のものもあらば、もっとメタルテイストのものとか、
あるいはファンタジーテイストなものとかを入れるようなバンドとかもありますよね?

それとは真逆にポップ路線になって、
ちょっと軽やかな・・スカートはいてる男子ですみたいなものもあれば

やっぱりこうもうほとんどこれコミックバンドだろ!みたいなものとかもあったりする。
90年代から比べるとヴィジュアル系ってすごい多様に今なってますよね。

國分
多様ですよね、あとやっぱりね多様な演出とかを
簡単に海外に発信出来るようになったっていうのがなんといっても大きくて

Versailles(ヴェルサイユ)も確かYouTubeに載せて
ガーッとこの観られるようになったっていうのがきっかけだったって聞きましたけど。

荻上
ネットの影響はヴィジュアル系を変えてますか?

國分
変えてると思いますよね。でやっぱり、音楽産業の在り方っていうのが
大分変わってきたっていうのが非常に大きいんじゃないですかね?
それまではやっぱり非常にレコード会社っていうのが強かったわけですよね。

だけど今はもう自分で音楽を作って人に聞いてもらって売るっていうところまで
1人で出来るようになってきちゃったときに、

まぁ今までの「こういうやり方でないと売れないんだよ」って
上の人が言ってくるのに従って音楽を作るのではなくて

勝手に好き勝手に楽しくやればいいじゃないっていう人たちが出てきて
しかもそれが今までの伝統から外れていたものだから新しさを持っていて
海外のファンがそれを発見するっていうね。これはなんかすごくいい話だなと思いますね。

荻上
そうですね、90年代から2000年の頭ってこう
レーベル問題ってよくあって、メジャーシーンに行くために
それまでの音楽性をある種捨てて行かなくてはいけないということに

異議申し立てするために敢えて自分はインディーズでやるんだってな形が
ある種の対立として固定されてたんだけど。

でも今はそういう対立軸もズレていて、
ネットで配信することも出来るしレーベルっていうものが
あまり意味をなさなくなってきたりもしてるわけじゃないですか?

そうしてくると、やっぱりこうメジャー行きになって急にこう
メイクが薄くなって今までやっていたはずの何かを捨て去っていくさまを

ファンが観てガックリみたいなことを味わわずに済むようになったりとか。
「そこを求めて無かったのに!」っていうのはやっぱありますよ。

GLAYですらある時期「メイク薄くなったな」って思いながら
緊張して観てたりとかしましたよね。

國分
でそのなんかね、要するに今までの伝統から外れて自分たちで好きにやればいいっていうのを
やっぱねヴィジュアル系の元祖のX JAPANとYOSHIKIはすごくそれをやっていて
僕はすごく大好きなエピソードがあって

YOSHIKIがレコード作りたい!とTOSHIとバンドを組んだときにね。
「レコードってどうやって作るのかね?」って言って
レコードをガッチャンってやっているプレス工場行ってみようぜ!って言って

プレス工場行ってプレス工場のおじさんに
「すいません、レコード作りたいんですけど?」って言って聞いたっていうんだよね。

そしたら「そりゃ音源持ってきたらやってやるよ」って言われて
「えっ!音源ってどうやるんですか?」とかそうやって聞いて
遡っていって作ったらしいんだよね。

なんかすごいレコード作るって言うと、「メジャーデビューしなきゃ」
「そのためには偉い人に気に入ってもらわなきゃ」とか考えるじゃないですか?
というのは作り方がもう決まってるんだと思うから。

そうじゃなくて、レコード作るんだから
レコード作ってるところ行ってみよう!っていう
この発想で始まってるんだよね。


南部
すごい最初からこう自分たちの足で立ってる感が匂う・・

國分
でもねYOSHIKIも余りにも知らな過ぎて
プレス工場の横でバンバンって演奏して作るんだと思ってたらしいんだよね。
そんなわけねえだろと思うの(笑)

荻上
逆にプロダクトと流通の方に発想が行くっていうのは
逆に言えば今はそうですよね。
どうやってその音源をネットで流そうか?とかっていう話に直結しますからね。

國分
なんか最初から自分の足でそのやっていって
ライブハウスとかを探したときもそうだったらしいんだけど。
どうやってライブハウスで演奏したらいいか分かんないからつって。

だからその自分たちで・・まぁ簡単な言い方をすると道を切り開いてくっていうか
そこが僕すごく、まさしく心を鷲づかみにされて
「俺もそうじゃなきゃ!」って思ったところなんですよね。

南部
哲学者たる原点的なものを・・?

國分
んーそうですね。
例えばその「哲学の本は売れないんだよね」とかって僕が学生のころとか
出版社とかね学者とかみんな言ってるんですよ。

俺はもうそれすごい腹立ってて、
「それはてめえらの書いてる本がつまんねえからだろ!」と思って
まぁ哲学の本だけど売れる本を作るみたいなことをすごく思ってましたよね。

それがやっぱり原動力になってますよ。
だからそれはある種YOSHIKIを見習ってんですよ。

荻上
それで書かれたのが「暇と退屈の倫理学」なんですね。


國分
それはちょっと言い過ぎかもしれないけども(笑)
それはちょっと多分遠い遠因ですよ。

荻上
でもその今たとえばバンドをやると言った時に
かつてみたいに海外シーンみたいなそういうような単純な話じゃなくて

自分のシーンっていうのをどういうふうに作っていくのか?っていうのが
けっこう戦略的にも問われている状況にあるわけですね。

といったときに好きだったバンドが海外進出みたいなことをしたときに
挫折して帰って来るのは本当に胸が痛かったですよ。

バンド名言うと「それは失敗じゃないんだ」って言われるかもしれないけれど・・
ロンドンとかでね公演してるときの映像とか観るとけっこう胸痛いんですよ。

南部
痛いっていうのはどういう意味で?

荻上
あの・・勝ててないと。「これは勝ててないな」っていう感じのものがビンビンあって
そういうようなところで勝負するものじゃないだろヴィジュアル系は、って

思っていた中での今で言う海外需要の在り方なので、
今ものすごく腑に落ちてますけどね。

國分
だからYOSHIKIが向こうからオファーを受けて
一応だそうと思えば出せたんだけど、多分このまま出しても
向こうのロジックの中で話が進むだけでダメだなと思ったんでしょうね。

それで反故にした、この計画を無しにしたっていうのが
まぁいわゆる僕が今日の書いた「YOSHIKIの判断は正しかった」っていう
その見切りの付け方ですよね。向こうの話に乗らないっていうね。

南部
風の読み方というか・・

荻上
「アンヴィル」というヘヴィメタの映画でね、
「Anvil(アンヴィル)」というバンドが日本に公演しに来たときに
日本ですごい盛り上がってるんですよ。


日本で盛り上がるかどうかって心配しているアメリカのバンドがですよ、
でその時に盛り上がってる客層がですね、海外の客層と顔が一緒なんですよ。

同じ層に刺さってるんだ!っていうのがとてもよくわかる映像だったんですけど
だからその時に「お前らが俺の国にいても良かったな」っていうように思ったんですよ。

でもそういう「同じお前ら」みたいなものはどの国にもいるというところに
このヴィジュアル系の視野が拡がってるんだなっていうのが
ある種YOSHIKIの勝利の条件だったっていうことなんですかね?今日の話は。

南部
では曲になりますけど、國分さんの選曲ということで

國分
えーとですね、X JAPANは激しい曲とバラードしかないというふうに
思われてるかもしれないですけど、ちょっと変わった曲もあって
これHIDEの曲なんですけど。

「Jealousy(ジェラシー)」というアルバムに入っているインストなんですけれども
僕すごく大好きで、非常に変わった雰囲気の曲なんで是非ね聞いてもらいたいと思います。
X JAPANで「Love Replica」


南部
はい、お聞き頂いたのはXJAPANで「Love Replica」
國分さんの選曲でおかけしましたけど・・

荻上
今日は本編で「ヴィジュアル系と疎外感」という
テーマでお送りしてきたような気がしますけど(笑)
南部さんは「疎外感」はどうですか?共感出来ますか?

南部
共感すごい出来ましたよ。ロンドンに留学してたときに
「ジャパンセンター」っていうのがセントラルロンドンの真ん中に
日本の食とか文化とかいろいろ本とかを売ってるところがあるんですけど。

そこにやっぱりイギリス人の・・男の子が多かったですけど
ヴィジュアル系とかマンガとかっていうのを真剣に探している姿を見て

「あ、ちゃんとこの需要っていうのがイギリスの中にもあるのねー」って
納得した日があったんですけどその日を思い出しました。今日の話で。

荻上
なんとか人に届けるとか、海外になんとなく輸出するっていうとざっくりし過ぎなんですけど
「海外の俺ら」みたいな人に届けるっていうのは(笑)

南部
同じ仲間がねちゃんと!!わかり合える仲間が!

國分
いるに決まってるんだよね。

荻上
日本にもヒップホップっていう形だったら
けっこうマイナーなレーベルのCDとかきたりするわけですから
同じような事はいろんな分野にあったりするわけですよね。

南部
人類皆兄弟と。

國分
みんなかどうか分からないけど、友達になれるやつはいるっていうこと。

荻上
こんだけ人類がいるなら、みんなは無理でもいるよということでございますわね。
中にはヴィジュアル系は疎外感なんて関係ない曲なんだとおっしゃる方もいるかもしれないですけど
そうじゃないと思います、僕は。
ということを力強くちょっと僕の記憶とともに訴えたいです。

(了)

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