今回は、2013年9月4日放送「春風亭昇太と乾貴美子のラジオビバリー昼ズ」
オープニング部分を
起こしたいと思います。
昇太
8月31日って寄席がやってない日なんですよ、お休みの日なんですよ。
お休みっていうか別の興行をやってるんですよ。
だいたい寄席って10日間興行なんで、とうきゃかん・・
とうきゃかんだって(笑)
10日間、例えば落語協会がやったら、次は落語芸術協会
次は、落語協会、落語芸術協会ってこうやってるんで
31日の日って1日こうなんていうか余るわけですよ。
だから別の興行やってるんで、
その日にですね協会の寄り合いとかをやると
寄席の出演に迷惑がかからないからやってるんだけど。
この間、8月31日にね「噺塚の法要」っていうのがあったんですよ。
これは昭和16年に、まだもう中国とかと戦争してるころですよ、日本が。
で、これからいよいよ太平洋戦争に突入しようかってころに
落語をね・・だいたい内容くだらないじゃん?落語って(笑)
乾
はい!
大きい声で「はい!」って言っちゃった(笑)
・・そうですね。
昇太
ねえ。なんかさ、日本中が「さあ戦争だ!」って言ってるときにさ。
なんかくだらないじゃん、落語って。
乾
「笑ってる場合か!」と。
昇太
っていう話ですよ!で、浪曲とか講談って勇ましい話が出来るのよ!
楠木正成の話とかそういうふうに尽くした、忠信の思いをその表現できるような
そういう話があるんだけど。
落語は極端に無いわけよ!
無いから、じゃあそのなんかちょっと廓噺(くるわばなし)とか、
花魁が出てくる噺とか浮気しちゃった噺とか、
そういう噺をもうやめよう!と
乾
なるほど!「そう場合じゃないだろ!空気読めよ!」って(笑)
昇太
そうそう、元々そういう勇ましいネタ無いんだから
せめてくだらないネタだけ排除しとけ!と。
「僕たちやめます!」お国のために頑張りますよ!っていうのを示すために。
で、台本とともにそういう名作と言われる噺を塚に埋めたわけよ。
それが「噺塚」っていうわけですよ。
だから昭和16年から「明烏」とかあういう名作の古典落語
あれは廓噺ですからね、あういうのが演じられなくなったの。
それでずーっと来たんだけど、まぁ終戦でもって
それで21年に慌てて掘り返して(笑)
乾
そろそろいいかー!って(笑)
昇太
「もうそろそろ笑ってる場合か」みたいな感じで(笑)
乾
けっこうすぐ掘り返しましたね(笑)
21年にもう掘り返しちゃったんですか!
昇太
21年の9月に掘り返したのよ。
乾
ほとぼり冷めてないと思うんですけど・・。
昇太
そこがいいですね!落語のね、世界のね。
乾
早いっ(笑)
昇太
早いんだよ!慌てて掘り返して!
乾
「まだ残ってるから!残ってるから!」って(笑)
昇太
「よしっ!これも出来る、これも出来る、みんなやろう!」って言って
そっからまた解禁になって、またやったわけですよ。
でもそういう・・言ったらさ落語みたいなね、世界でもね
そういった「禁演落語」みたいなのを作らなきゃいけないような
そういう不幸な時代だったわけです。
あと、戦争で亡くなられた方もたくさんいらっしゃるんで
そういった方を一緒にですね、そういう思いを込めて法要しましょう!っていうのが
その「噺塚の法要」なわけですよ。
これ我々、公益社団法人 落語芸術協会でやってるわけですよ。
それをやるのにみんな浴衣を着て集まるわけね。
で、浴衣で田原町のあたりに宝泉寺ってお寺があるんで、そこでやるんだけど。
そっから、ビューホテルで研修会があるわけ。
研修会って言ったってね、まぁお酒とか飲んだりなんかして
楽しく過ごして、みんな落語のことを研究する研修会があるんだけど。
みんなそっからぞろぞろ歩くわけだよ、浴衣姿で。
で、8月31日っていうのはちょうどね、浅草のサンバカーニバルの日なんですよ。
だから観光客もいっぱい来てるわけなの。
そこにさ、浴衣着たニヤニヤ笑ったやつらがさ、
ぶらぶらぶらぶら歩いてるじゃん?
そうするとじゃあ昇太だってことも分かるでしょ?
だけど、所詮この間本当に分かったんだけど、
僕とかなんかザックリとしか覚えられてないっていうのが
この間やっぱり本当によく分かって。
なんか「笑点」とかに出てる真ん中へんにいる奴だみたいな
そんな感覚しか無いはず。
乾
白っぽいけどクリーム色だったかな?みたいな。
昇太
「何色だったかな?あいつ」みたいなそういう感じで
ザックリ覚えられてるわけ。
だから「昇太」とか名前出てこないわけよ。
道行く人たちがみんな浴衣着てるからすぐ分かるからさ
「おーっ!おーっ、ほら!おーっ、おーっ、おー」って
俺、「ほら!」か「おーっ!」なんだよね、僕ね。
でたまにさ、ものすごい熱烈に握手とかしてくる家族とかいるわけよ。
バーっと握手されて「うわっもうほら、いつも『笑点』見てます、毎日!」って
毎日なんかやってないじゃん!たい平くんのマクラじゃないけどさ。
本当に「毎日見てます!」って毎日やってないですよ、これ。
で、「うわーっ写真撮っていいですか?」とか言われて
「もう、どうぞどうぞ」って言うけど、
とうとう名前は分かんないわけよ。
ただ、ギリギリの情報が分かってるだけで
なんか「早く結婚して下さいね」とか、「なんでモテないんだろう?」とか言われて
俺「モテない」ってことになってんだけど、そうなの?
結婚はしてないけどさ、いつの間にか転化されてるわけ勝手にさ。
「モテない」になってるわけね。
乾
そんなキャラ付けしてないのに(笑)
昇太
そう、俺そんな気なかったのに!「えっ、モテないんだ!」と思って、
「すいません結婚してないけど、モテないわけじゃないですよ」って言ったら
「えーっ!えーっ!」って言われて(笑)
乾
そこはこだわりたいんですね。
昇太
それで終わったあとさ、小遊三師匠がさ。
「じゃあ昇太ちょっと一杯飲みに行こうか?」ってね
鰻屋さんにスーッと入って、この辺カッコいいですよ。
で、鰻の白焼きかなんかさで冷酒かなんかで飲んでたの。
そしたら鰻屋の下にちょっと降りてったらさ鰻屋の奥さんがさ。
「見ました?昇太さん!ブラジル!ブラジル見た?ブラジル!本場見た?」とか言って
何のことか全然分かんなかったんだけど、
浅草サンバカーニバル、あれ日本に一般の人たちもサンバ隊の人たちも参加するんだけど
ブラジルの本場の人たちも来てるわけよ!
それがすごい!ってことをその女将が訴えるわけよ、俺に。
「すごいのよ、もう!」「本場って違うわね!」
「全然大きさがちがうのよ!」「もう熱いのよ!」
「それがなんかね内側から出てくるものが全然違うのよ!」って(笑)
何言ってるのか全然分からないけど、なんとなく・・
乾
すごいんだなってことは伝わってくるんですね。
昇太
そしたら、小遊三師匠が「そうなんだよ、昇太!すごいんだよ!」
「もうパンパンナンだよ!」って、同調してさ(笑)
乾
見たんですか!小遊三師匠!
昇太
小遊三師匠見たんだよ!
「あれは敵わないぞ!あれは敵わない」って
何にどう敵わないのか全然分かんないんだけど。
で、俺も見にいったのさ。慌ててどんなものかと思って。
そしたら本当にすごいのよ!
乾
えーっ!どうすごいんですか!
昇太
なんか細胞一つ一つが大きいんじゃないか?って思うくらい
で、こう・・輝きみたいなものが違うのよ、もう!
乾
そんな違うんですか?
昇太
全然違う!で、その後に日本の人たち来るでしょ?
なんかほうすんごいホンニョリしてるのよ。
乾
単純に身体のサイズの問題ですか?
昇太
サイズの問題と、あと細胞の内側から湧き出るようなパワーみたいなものが!
乾
なんですか、それ?
スターのオーラみたいものが!
昇太
スターじゃないんだけど・・
なんか顔は汚らしいオバさんなんだけど、体全体から湧き上がるような
細胞一つ一つの強さみたいな・・
それがもうムンムン発散して、♪ザンザンザンザンザカザカ~
向かってくるわけよ!
乾
敵わないって感じでした?
昇太
もうそれをさ、カメラ小僧じゃなくてカメラ爺さんたちが
定年退職かなんかでさ、きっとお金たくさんあるんでしょ?
プロカメラマンが持つようなものすごい一眼レフの、望遠の!
それでもって血走った目でもって、爺さんたちがバチャバチャバチャバチャって。
すごいんだよ!もう目が違うのよ!
乾
熱いですね、浅草。
昇太
そのブラジルの内側から湧き出るようなパワーを持った人を
もうお爺さんのヒョロヒョロに干からびてるんだけど、
目の輝きだけはランランと輝いたパワーとパワーのぶつかり合いなのよ!
すごかったよ!
もうちょっと浅草サンバカーニバルいっぺん見た方がいいよ!
いや本当に、その写真撮ってるお爺さんたちがすごいんだよ!みなぎるパワーが!!
乾
やっぱり枯れてると、そういう場には行けないんですかね?
負けちゃうから。やっぱり風景とか撮りに行っちゃうんですかね?
昇太
だから普段はきっと、町田ダリア園とかさ、それは分かんないけどさ(笑)
そういうところ行って撮ってるんじゃないの?
なんか薔薇撮ったりとかしてるんじゃないの?
乾
だけど、サンバになると!
昇太
「よーし!」って輝いて。
「もう3ヵ月長生きできます」みたいな感じでもって・・
乾
すごいですね、本場はそんなすごいんですか。
昇太
盛り上がってるんですよ、まぁねもう是非来年。
「噺塚の法要」と共にサンバカーニバルも
ブラジル人の本場を!
(了)