今回は2013年11月19日放送「荒川強啓 デイ・キャッチ!」内
「メキキの聞き耳」萩原健太さんの回を
起こしたいと思います。
荒川強啓(以下、強啓)
今日のテーマは
島倉千代子さんが残した音楽とは何だったのか?を考えるということで
萩原健太(以下、萩原)
そんなたいそうな話をするわけじゃないんですけどね。
島倉さんが亡くなって、本当に大きな損失ではあるんですけどもね。
島倉千代子さんの歌ってた歌で「からたち日記」っていうのはありますけれども
あの曲を聴くとね、日本人の音楽的な特性みたいなのがすごくよく分かるんですよ。
あの曲ね、譜面に起こそうと思ったら大変なんですよ。
だから西洋音楽の楽理に合わせようとするとけっこう大変なんです。
♪こころで好きと叫んでも 口ではいえずただあの人に
っていうあれですけど
これね、最初3拍子なんですよ。
♪こころで好きとさーけ・・ここまで3拍子
この後、4分の2拍子で、♪・・んでも が4分の2拍子です。
その後、4分の4拍子になります。
♪口ではいえず ただあの人・・
でここでまた3拍子に戻ります、ウンタッタ、ウンタッタ・・
これね、譜面にするとややこしくてしょうがないんですよ!!
たぶんね日本の人以外には分からない・・
アメリカのミュージシャンに「これやって」って言って譜面渡しても
どうしていいか分からないと思うんですよ。
だけど、日本の人だったら集まって「この歌、歌おう」つったら
平気で歌えるじゃないですか!
これがね、たぶん日本人の持つ音楽的な特性
欧米の音楽だと基本的に通底するビートっていうのがありますよね。
♪ドンツッタンツ、ドンツッタッ・・とか1曲ずーっとそれが流れてて
そこにいろんなメロディーが乗ったりするわけですけど
日本人はむしろメロディー単体が流れるところに拍があるっていう
だから独特の・・日本人が持ってる情感とか・・その間とか
言葉が持ってる響きとかそっちに全て音楽がこうくっ付いてくっていうかたち
これをだから、例えば「あんたがたどこさ」ってあるじゃないですか?
あれも普通にやってますよね?日本人ね。
あれも拍ていうと基本4分の2拍子ですけど、
♪あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ ここに4分の3拍子が2つ入ってる
でまた ♪熊本どこさ って4分の2拍子になってる
片桐千晶
何にも考えずに歌ってました!
萩原
考えずでしょ?
あと、盆踊りとかでね。よくが♪月が出た出た~
ってやってるじゃないですか?
あれね、たぶんみんな聴いてると途中で太鼓とか手拍子おかしくなってますよ(笑)
というのは ♪三池炭鉱のー うらに出た って
ここで1発、4分の3拍子が入ってるんですよ。
それ気にしないでみんな、こんななってやってるから
♪三池炭鉱のー うらに出た ってここでウラになっちゃってる、ここのところ
もうめちゃくちゃなんです、そういうの関係ないんですよ。
だから日本人はビートに弱いってよく言われますけど
ビートに弱いというよりは、ビートなんか日本人には関係なくて
むしろ情感とか間とかを評価してこその日本人特有の音楽性なんだと。
これこそ日本人の美学なんだ!っていうふうに考えて
ちょっと今後、そういうのを頭に入れていただいた上で
往年の島倉千代子さんの歌声をちょっとここで聴いていただきたいんです。
ちょっとアナログ盤でバチバチ言ってますけど
それも含めて往年の歌声ということで楽しんでいただきたいと思います。
島倉千代子さんで「からたち日記」
強啓
健太さん!流石!本当、おっしゃる通り!!
萩原
これややこしいでしょ?
その西洋的な楽理に合わせようとすると難しいんですけど
日本人としてはとっても素直に受け入れられるメロディー
ただ最近はね、宅録とかも増えてきたしヒップホップとかも人気あるし
みんなこのドラムマシーンとかそういうのでビートを置いてから作る曲とかが
増えてきているじゃないですか?
だんだんそういうふうに日本人も変わってくると思うんですけども
やっぱりこのね、日本人ならではのテレパシーのような音楽性みたいなのを
無くさないで欲しいんですよね。
強啓
それと島倉千代子さんがそんなものを全く感じさせないで
語りかけるようにスーッと入ってきますね。
萩原
この人はやっぱりフレージングだとかフェイクだとかそんなふうな言い方で言いたくない
本当「節を回す」っていうね、節回しってのがすごく日本人の情緒みたいなものを
見事の表現する方だったと思うんですよ。
だからやっぱ島倉さんが亡くなって、こういう日本人特有の音楽性みたいなものが
失われてしまうことっていうのがね、僕はとても残念だと思うので
これはね、若い世代の人ももう1度この感じっていうのを恥じるんじゃなくて
これを誇らしく思って受け継いでって欲しいなと
思うことを提言しに来たわけですよ。
強啓
それで高いところのこのコロコロコロッっていうところが鈴のような
あれがその・・何拍子というのもシュッと取り込んでしまっているいるという
いやああ、健太さんに教えてもらってまた島倉千代子さんの魅力を
再発見したような気がします。
(了)
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