今回は2015年8月18日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交遊録」深澤真紀さんの回を起こしたいと思います。
眞鍋
火曜日の担当はコラムニストの深澤真紀さんです、よろしくお願いします。
深澤
よろしくおねがいします。まあ今、世間を騒がせてると言ったら何と言っても佐野研二郎さんのパクリと言われているエンブレムです。これはねどういうものかというと、ベルギーのデザイナーが制作したテアトル・ド・リエージュというロゴマークと似ているということで自分のfacebookにアップしてニュースになった。
他にもスペインのデザイン事務所が東日本大震災の復興支援のために制作したデザインとも色が似ているといって話題になりました。ちなみにね、エンブレムとロゴっていうふうに言い分けているんですけど、東京五輪の方はエンブレムです。
エンブレムってどういうことかって「紋章」ですね。ドイツ語だと「ワッペン」です。なんとか王室とかよく胸にブレザーにつけますよね?あれがエンブレム、紋章です。つまり自分の所属する組織を表す象徴ですね。
ロゴは何か?というと「ロゴタイプ」ということで名前をデザインしたものですね。つまりエンブレムっていうのは文字でなくてもいいってことですけど。ロゴは文字である。ですから今回東京五輪はエンブレムと言って、テアトル・ド・リエージュについてはロゴマークというふうに言っています。
まあスペインの方は問題ないって言ってるんですけれども、ベルギー側はベルギーの裁判所に使用差し止めを提訴している。でまあ、今回大きい問題だったのはベルギー側はこのロゴを商標登録してなかったんですね。
五輪のエンブレムってやっぱりものすごく大きいものなので、IOCも全世界の商標をチェックしているんです。全世界の商標をチェックするって言うのは簡単なんだけど、ものすごく時間をお金がかかっていることなので。つまりそれでは引っ掛からなかったので問題がないというのがIOCの立場。
大竹
なるほどね、商標登録をこれはしてなかったんだ。
深澤
ただもちろん著作権があるのは事実なんですが、ただ著作権があったとしてもたぶん著作権侵害にならないだろうと。素人には似ているように見えるんだけれども、違うんじゃないのか?っていう意見が多いんですね。
私もこの佐野さんの釈明会見を全部見ました。頭から終わりまで。全部見たし、説明を聞いてやっぱりパクリでは・・これに関してはないと思っています。
どうしてか?というと、テアトル・ド・リエージュに関していうとですね、テアトルの「T」とリエージュの「L」をデザインしているから、上と下にハネのところがあるんですけれども。この東京五輪は「T」と「日の丸」をデザインしているんですね。丸をデザインしているんですね。
だから同じようにハネが出ているんだけれども、デザインの発想が全然違うっていうことなんですね。しかもこの四角と丸のハネのデザインの部分のパーツを使ってご本人は「A」から「Z」「1」から「0」まで全部作っているんです。
つまりそれぐらいこのパーツに意味があるっていうことで、映像も作成していますので思想が全く違うんだけどできあがりが似てしまった。たぶんですねベルギーのデザイナーも会見を観て「あっ思想が違うな」とってことは本当は理解できたんだと思います。
ただもうちょっと引っ込みがつかなくなっちゃったっていうのがあるんじゃないかな?と思うんですが、ここで終わってれば良かったのに非常に大きな問題がこのあと起こったわけですよね。
それはネット上で他にもどうも佐野デザインはいろいろ似ているものが多いよ。きっと他にもあるんじゃないか?っていうことでとにかくネット上の探偵団というか調査団っていうのはものすごい力ですから佐野デザイン作品の調査が本格的になりまして。
サントリーのトートバッグにコピーやトレースが判明してしまった。これどういうふうに皆さんよく調べてくるなと思われると思うんですけど、今非常に簡単でですねGoogleの画像検索っていうのがあるんですけど画像のファイルを入れると似た画像がいっぱい出てくるっていうシステム
Google画像検索ってもちろん言葉でも出てくるんですよ。「眞鍋かをり」って入れればかをりちゃんの写真が出てくるんですけど、かをりちゃんの写真を入れたらまたかをりちゃんとかかをりちゃんに似た人の写真が出てくるっていうのがGoogle画像検索
なので今Google画像検索を使うのは常識なんですけれども、そのGoogle画像検索でいろいろ調べたら次々とサントリーの飲料のプレゼントに使われていたトートバッグ30種類のうちなんと8個もコピーとトレースをしていて、これは佐野さん側も認めて謝罪しています。
サントリーもそのデザインのトートを取り下げていると。なのでここで「あっこいつはもうパクリの常習犯である」と。五輪のエンブレムもパクリであろうという世論になっていて、そう思うのは非常によく分かるんですが。
これ佐野さんはですね、五輪のエンブレムとサントリーのトートは自分の立場が違うんですね。というのは何か?というとサントリーのトートバッグに関しては彼は「ミスターデザイン」というデザイン事務所を持っていて「アートディレクター」として自分の事務所のスタッフが作ったものであると。
で、「アートディレクター」ってカタカナなんで分からないんですけど、要するに美術監督なので監督ということは映画監督と脚本家みたいに実はアートディレクターとグラフィックデザイナーって意味が違ってアートディレクターって必ずしも自分でデザインするわけじゃなくて
自分がその全てを監督するという立場なんですね。トートバッグに関しては彼はデザインをしていない。だけどもちろん監督責任はものすごくあるし、そもそもいい事務所だとは到底思えないのでこんなコピーやトレースをするということはあんまり良いボスではないのだろうとは思いますが。
しかし一方での東京五輪のエンブレムに関しては彼はデザイナーとして、つまり自分の作ったものとして関わっているので、だいぶね関わり方が違うということなんですけど。
ただサントリーのトートは他にも問題があって、私ね一番問題だと思うのはサントリーのトートのサイトを見に行くと「佐野研二郎デザイン」って書いちゃってるんですよね。本当は「佐野研二郎監修」とか「アートディレクション」とか「プロデュース」とかって書けば
あるいは「ミスターデザイン」っていう彼の事務所の名前を出せば良かったんだけど、やっぱり普通の人が「佐野研二郎デザイン」って見たらそれは佐野研二郎さんがデザインしたものだろうと思うのに、ここに来て「僕じゃないですよ、事務所のスタッフです」って言っちゃうのはサントリーが悪いのか佐野さんが悪いのか分かりませんけど、これはかなり問題だなとは思うんですが。
しかし、五輪のたぶんエンブレムはパクリではないだろうというのが私の印象ですし、デザインの世界の人は多くそう思ってるんですね。でもねやっぱり東京五輪のエンブレムは他の問題が実はあるなあと思っていて。
でもね、やっぱり東京五輪のエンブレムは他の問題が実はあるなと思っていて、それは元々この公募はどういうものか?っていうとものすごく難しい公募だったんですね。
というのは、すごく大きなデザインコンテスト2回獲らなきゃダメだったという。でもそれは非常に難しくてそのためにネットでは「業界利権」っていう言葉が生まれたりしたんですけど。
だからまあ104件しか応募がなかったっていうくらい敷居が高過ぎた。応募できる人がすごく少なかった。招致のエンブレムは桜のリースでしたよね?あれはとても素敵だったんですけど、あれはなんと美大生が獲っているんです。
つまりそんな難しい応募条件がなくて、あんなにいいものが出たりしていたのでなんかちょっと敷居を上げ過ぎたなっていうのが1つの問題だった公募の。誰しもが応募できるわけじゃなかったっていうのが1つの問題で。
実は私、1番大きい問題だと思っているのは今回のデザインはベルギーのパクリではないんですけど。本人も認めているんですが、1964年の東京五輪の亀倉雄策さんの日の丸の下の五輪のマークがある、もう誰もが知っている有名な、当時を知っている人は皆さん見た素晴らしいエンブレムなんですけど。
あの印象が強すぎて、それを実はパクってるわけじゃなくてそれに引っ張られ過ぎているんですね。だから丸なんです。「T」と「日の丸」っていうのは彼にとっては亀倉雄策さんの対するオマージュなんだけど。
これって普通の方って亀倉雄策さんをまず知らないし、東京五輪の64年のデザインも見れば分かるけどそんなにピンと来ないのになんかすごい内向きじゃないですか?64年のデザインに「同じものにしよう」っていうがためにすごく説明っぽい分かりにくいデザインになっちゃったなっていうのが1番の問題で
実はね、東京五輪ってデザイナーにとってはものすごく重要だったんです、1964年。どうしてか?っていうともちろんこの亀倉さんのデザインが非常に素晴らしかったっていうのもあるんですけど。
もう1つこれは知らない方も多いんですけど、トイレの男女マークありますよね?誰もが知っている青い男の人と赤い女の人あるいは非常口の走っている緑色のマーク。あれって東京五輪のときに日本のデザイナーが作ったんです。
太田
あれはある種、世界共通になってますよね?
深澤
世界共通なんです、あれはなんでか?っていうといろんなことを並べると分かりにくいからピクトグラムっていう言葉を絵で作りましょうっていって、しかも著作権を彼らは放棄したんですよ。
眞鍋
どこでも使えるように?
深澤
だから今、世界中どこに行ったって非常口とトイレはそのピクトグラムを使っているし、いろいろな水泳とかマラソンとかも人が走っていたりするピクトグラムになってますよね?あれも実は東京五輪のときに作って、東京五輪って「デザイン五輪」って言われているくらい、64年の。
つまりデザイナーにとってはある種呪いみたいなすごくハードルの高いものだったんですね。
大竹
えーと、ちょっとだけ話戻していいですか?1つはその佐野事務所のデザインのほうね。このトートバッグとか。さっきGoogleで画像検索でこんなに簡単に出るんならばだよ?なぜこの事務所の人たちもそのGoogle検索をしなかったの?
深澤
本当にそうです。
大竹
それが1つ疑問として残るよね?もう1つさっきおっしゃってたこの佐野さん個人に対する疑惑があるんだけど、それはそのトートバッグとかそういうのを自分の名前で会社の名前を使わず自分の名前を出したと。
この2つがいくらオリジナルの東京のものだって言ってもそれの信用度を今の2つのことがちょっと落とすんじゃないですか?
深澤
そう思います、ですから私はパクリではないけれどもこのまま使い続けるのはたぶん難しいだろうと思っています。なぜなら五輪のエンブレムって今や企業スポンサーが使うものなんですね。機能も品川駅を歩いていたらもうすでにJALがJALのマークとこの五輪のエンブレムでもうポスター出しちゃってたの。
企業ってものすごいお金を出してスポンサードしているのに、こんなにいわくが付いてしまうと使えなくなるということを考えると。まあ横尾忠則さんも「いくら商標登録されていなくても誰かがベルギーのロゴを事前に見ていたら『やっぱり似ている』って言ってこれは通らなかっただろう」っておっしゃっていて
つまりパクリじゃないけどやっぱりこのサントリーに関しては本当に社会的責任はやっぱり大きい。ラフはみんなそういうふうにやるんですよ、ネットからちょっと借りてきたものを貼ってオッケー取ってから許諾を取ったりゼロから作るのに。それをしないっていうのは本当に事務所がだいぶひどいと思うので
大竹
だからそっちはその問題があるし、それからこっちのデザインに2つクリアしなくちゃいけないっていう敷居の高さもここももう1つ運営する側として問題はちょっともっと広く、まあ見るのは大変なんでしょうけども見てほしいなという問題はこっちにはこっちであるよね。
深澤
だから非常にこれたぶん佐野さんの五輪のエンブレムをGoogleの画像検索にかけてもリエージュのロゴは出てこなかったと思うんです。色が全然違うのでそれはすごく難しかったのでツイてなかったのはツイてなかったと思うんですよね。
ただ結局そのあとにこうやってネットの調査団の力によって彼のアートディレクターとしての穴がちょっと大き過ぎたっていうのが分かっているので。
大竹
今だから深澤さんがおっしゃっているのはデザインとしてはいいけど、事務所としての運営能力としたらこの人はダメだと、そういうふうにおっしゃっているわけだね。
深澤
ただ既にコンペでは原研哉さん、葛西薫さんとこれも日本を代表するアートディレクターですが、この3つが受賞していて最終的に佐野さんのものが選ばれているんですけど。たぶんこの2つからにする可能性もなくはないんです。
大竹
これでも損害賠償とか大変なことに・・
深澤
大変なことになる・・ただこれに関してはパクリではないっていうところがあったりするので、もしかしたら押し通す可能性もね・・これはね、競技場と違って競技場は日本側だけの問題なんですけど、これIOC側の問題になってくるので日本国内が揉めているっていうことはIOCにとってはそんなに重要ではない。
なのでもしかしたら押し通すかな?っていうのもあるんですけれども・・ただまあパクリではないよっていうことは間違いなくなるのでただいろんな問題でごっちゃに。あとは1964年の東京五輪が実はデザイン的にすごく呪いを与えているというかそういういろんな問題があるよということで。
(了)
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