いとうせいこうが語る「たけしさんも40年経って浅草帰って来て気持ちよかったんじゃないかなと」
今回は2015年9月24日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交友録」いとうせいこうさんの回を起こしたいと思います。
いとうせいこう(以下、いとう)
こんにちは。
大竹まこと(以下、大竹)
はい、こんにちは。
いとう
この間、宣伝させてもらった「したまちコメディ映画祭」の・・
大竹
ああ、すごかったんだって?
いとう
本当に、それでたけしさんがもうオープニングレッドカーペット歩いてくれて。それでそのあと最終日にも来て下さって。んで前も言ったように元「フランス座」今「東洋館」ってなってるけど、そこの四十数年ぶりに舞台に立ったんですよ!
僕も呼び込む形だから、もう真横にいるじゃないですか?するともう出て来たらもう「昔はここにデベソがあって、そこに踊り子さんが出てきて俺たちがこういうコントをした」っていう話を。
それでものすごく「ああ、なるほどな」と思ったのは、「こんなに小さかったかなあ?」って言ったんですよね。
大竹
そうなんだよ、小っちゃいんだよな。
いとう
そう!やっぱり出だしのころは大勢に見える、なんでも。それがリアルだったしね。それで裏側に僕とたけしさんと待ってたからその間、元フランス座の裏側で「ここに深見師匠が部屋にいて、おいらがここにいつもいたんだ」って言って。
こっちに行くとちょっと長めの楽屋があるんですよ。ここに踊り子さんがずっといて、それで「たけしさん、ここに住み込んでたんですよね?」っていう話になって「そうなんだ」って。「どこですか?」って一応聞いてみたら、
「たしか・・」つって歩いていって1個こう鉄階段みたいなのを下がったら引き戸の部屋があって「ここだ!ここだ!」って言って開けたら、ガラーンとしたもう6畳くらいのちょっと長細い部屋で「おいらずっとここで寝泊まりしてたんだよ」つって。
いやーもうすごい歴史を思わずそこの部屋だけは写メしましたけど。だか羅僕にとってはものすごく大きい1日でしたよ。
だから芸人としてそれをやって、最初何にも笑いに興味ないみたいな話でしたよ。新宿であぶれて大学も中退して行くところない、金もないんで浅草のすトリップ劇場のエレベータボーイの仕事をがあるから下に立って・・
下に立っていたら深見千三郎師匠が「お前、上でコント1人足りねえからお前やれ」って言われて上にあがっていったっていう。そこがお客さんと一緒に上がってきたエレベータだから「いや何この体験!」っていう。
そのあと、浅草公会堂ではずーっといろんなバンドを集めてたけしさんをもうリスペクトするライブをずーっとやってて、
最後にサンボマスターが30分から40分ノンストップでずーっと曲をやって、ずーっと「ビートたけし!ビートたけし!」って、「お前ら本当にリスペクトするのか!」つって、
ずーっと煽って煽って最後にどーんってたけしさんが出て来て1000人スタンディングオベーション鳴り止まないですよ拍手が!「おかえり!おかえり!おかえり!」って言って。
それでそこで「浅草キッド」を歌ったんですよ、完璧な「浅草キッド」でしたね。ほんでもうここで歌うっていうことの意味がどういうことか分かっているからね。
浅草帰ってきて浅草の歌を歌う。それで十数年ぶりに人前で歌うわけだし。それで歌ったあと、まあたけしさんにはどうもこれは知らせてなかった。
僕は知らせていると思い込んでいたけど、もう1回みんなで「浅草キッド」を今度はたけしさんに向かって歌う。「そこにいて下さい」って言って。
まあ普通のアレンジじゃなくてうるさいロックンロールにした方がいいと思ったからその場でバンドに言って「ロックンロールにして」って言って。それでサンボがロックンロールにして。
そしたら僕らが一所懸命こう歌っていたら、一番大声でたけしさんがもう最後は一緒になって大合唱ですよ。高田文夫さんは向こうで見ているし、勝俣くんもまあ「こんなことあるよ」って来てくれて、
もういろんな本当に尊敬している人たちの中で1人の芸人がこう言っていました。挨拶のところでね、コメディ栄誉賞受賞したから。「俺はずーっと浅草で死んでいくものだと思って芸人になった」って。
「それでたまたまテレビに出て、こんなことになったけど食えねえ時期に食わせてくれた人たちがいたから俺がいる、それがこの浅草だ」っつって。それで「ありがとう」って言って帰っていったら、もう泣いているし!みんな。
後ろで芸人もポカスカジャンとか泣いているし、俺ももうこみ上げちゃってね。
大竹
まあ浅草は毎日行くような定食屋の人だとかね、喫茶店の人だとか。あと何が煮込んであるか分からないような煮込み屋の人だとかみんな芸人の味方だからね。あの辺の人たちは。
なんかそれでそこに連れてってくれるのが、まあ俺たちの場合はWけんじさんだとかあういう人たちがここの蕎麦だとかここのカキフライとか連れてってくれたりして。
まあそこでみんな浅草から・・俺たちテレビじゃない?だけどそこの人たちはそこにいるっていうかね。そこの芸っていうかね・・
いとう
土地の芸ですよね。だからもうすごかった、だからその東洋館での挨拶のときは最後にこれはサポーターのアイデアだったんだけど、松倉会長っていうフランス座の会長で。
たけしさんの住んでいたのが「第二松倉荘」そこの大家でもある人ね。「たけちゃん、売れたねー!」つって(笑)花束をおじいさん渡しちゃって、でロック座の斉藤ママ、会長が来て・・
それで花を渡すときにここでは言えない女性器の名前を平気で言っちゃって、たけしさんがズッコケるっていう場面もあって、まあ土地の人のキャラクターもやっぱり濃いからすごく良い会をやらせていただいて皆さんこの場を借りてですけど、お礼を申し上げたいと思います。
大竹
まあそうだね、東京の街のあちこちに行くと本当に今日もオープニングで話したけど、横とか縦につながり何にもない街に俺たちは暮らしているじゃない?
そうすると浅草みたいにあの横とのつながっているのがね、昔はそれがウザくもあったんだよ。
いとう
そうだよね、そうだけども。
大竹
逆にうっとうしかったんだよ。「なんで声掛けてくるんだよ!」っていうね。でも今でもそれが残っているのは浅草くんだりという感じだね。
いとう
だからたけしさんも40年経って今帰って来て気持ちよかったんじゃないかなと。今日はそのライブのときの1人ものすごい誰も知らないような「海藻姉妹」っていうこの谷中で活動しているんですよ。
だから芸大まわりの子たちなんですよ。全員女の子で3人、めかぶちゃん・こんぶちゃん・わかめちゃんっていう海藻の名前が付いていて、この子たちがね1人が鍵盤で1人がサックス、あとクラリネットみたいな。
3人が奏でる音楽がね、編曲がもうね。オーケストラにしか聞こえない3人でやってるのに。完全にこの2、3年でどっかのすごいメジャーな映画音楽は絶対に確実にやる、いま全く知られていない出たてのDVDとCDを持ってきたので。
大竹
えっ、芸大の?
いとう
たぶん芸大の、1人は今年卒業したっていう。この子たちの1曲を聴いていただいて今日は1人が高知県出身なんで「よっちょれ」っていうなんかお祭りをモチーフにした「よっちょれラプソディー」っていうのを聞いていただきたいと思います。
(動画の曲は「よっちょれラプソディー」でなく「ユーラシア超特急」です)
太田英明アナ(以下、太田)
この海藻姉妹のアルバム「海底演奏会実況盤」というアルバムから「よっちょれラプソディ-」という曲をお届けしているということなんですけどね。
いとう
DVDも付いていて、演奏シーンというかもうライブですね。ライブの中には僕も客としていたりして写ってますけど。
それもこのCDとDVDがほとんど音が変わらないからライブでこれだけのめっちゃ難しいフレーズをニコニコ笑いながら女の子たちが。
太田
なんか「南国土佐をあとにして」とか「よさこい節」とかちょいちょい入ってきてますね(笑)
いとう
いろんなのが入っていて、何でしょうね?こういう才能がやっぱり若い子達から出てくるっていうことが生きていると楽しいっていうかね。舞台があったら使えるのに、大竹さんね。絶対使ってたくらいの人たちだよ。
光浦靖子(以下、光浦)
やりましょうか?ね。
大竹
「めかぶ」とか「こんぶ」とか「わかめ」とかね。なんかサザエさんに出て来そうなね。それもちょっと意識している感じもあるよね?
いとう
衣装もすごく可愛い、海藻の柄の。
光浦
ちょっと北欧っぽいような。
いとう
彼女たちはこの間はじめてのツアーを終えて。
大竹
もうプロなの?プロじゃないの?
いとう
プロになりかけですね。
太田
これがインディーズリリースなんですよね。
いとう
インディーズでリリースして自分たちでこれからなんとか・・今まで谷中でいろんなカフェとかでやっていたみたいで。だから町内会長みたいな人にすごい喜ばれて「ああ、見つけてくれてありがとうね」みたいな感じで「この子たちすごいんだよ!」って。
だから言ってみたら下町が育てたアーティストという意味では、たけしさんが昔そうだったけどこういう女の子たちもいるっていう今日はそういうお話でございますね。
(了)
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