今回は2015年10月26日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹メインディッシュ」斎藤環さんの回を
起こしたいと思います。
辺見えみり(以下、辺見)
本日のお客様をご紹介いたします。専門の精神病理学だけでなくマンガや映画、サブカルチャー全般に精通し、本格的な文芸・美術評論も執筆されています。
今年6月にフィンランドの精神医療について書かれた「オープンダイヤローグとは何か?」というご本をお出しになりました。筑波大学大学院教授・精神科医で批評家の斎藤環さんです。
大竹まこと(以下、大竹)
ようこそ、いらっしゃいました。
斎藤環(以下、斎藤)
よろしくお願いします。
大竹
前回は6月30日、何年前だろうね?
斎藤
昨年ですね(笑)
大竹
あ、昨年ですか・・すいませんね。そのときには日本には100万人の引きこもりの人がいるとか斎藤さんは男女関係が乱れていると聞くととっても嬉しくなるとか(笑)
斎藤
そこを取り上げられちゃうと、ちょっと・・(笑)まあそういうことも言いましたね。
辺見
それだけが今、残ってしまいました(笑)
大竹
そんなお話をさせていただきました。今日は新しくご本を出した「オープンダイヤローグとは何か?」という本を後半で紹介させていただきますが、
まあでもこの「オープンダイヤローグ」ってとってもシンプルな方法が対話による何かの方法がかなり有効だっていうことで日本の精神学会っていうんですか?そこでもかなり衝撃的だってうかがいましたが?
斎藤
そうですね、もう何年も経験のあるベテランの人たちがこの手法を聞いて「目からウロコだ」という発言をされてますので、ショックをけっこう受けているという状況ですね。
大竹
まあお金もかからない、けっこうシンプルな方法。後ほどこの話は後半でお伺いいたします。
では、まず最初の方はですね。日本という国ですけれども、この国はなんかこう・・ちょっと今の芸術とか文化とかそういうものはなんかちょっと端っこに追いやられている感じが僕はするんですけど、
その上になお重なって今度、成年年齢っていうんですか?成熟年齢っていうんですか?まあ選挙に行けたりいろんなことをする権利が18歳からということになるわけですよね?
これはこのなんかなかなか大人になれないなという中で早く大人にしちゃいたいという思惑も絡んでこうなっていると思うんですけれども。どういうふうに斎藤さんはお考えになっていらっしゃいますか?
斎藤
だいたいですね、有識者の方とかインタビューすると成人年齢の引き下げ皆さん賛成なんですね。反対している人が私くらいしかいないので、だいたいこういう意見は私に回ってくるんですけれども。
私は反対なんですよ。何でか?っていうと、まず1つは成人年齢を下げたとしても別に成熟しませんということがまず1点。だって今20歳の成人式でどう荒れるかを皆さん見物に行く、そういう状況ですから。
大竹
一時期よりかは収まっていますけれども、それでもまあね。
斎藤
収まってきましたけれども、誰も大人と思ってないわけですよね。18歳っていうのは高校3年生卒業したばかりぐらいですかね?彼らを大人として我々が扱えるかどうかというと、いやーどうなんでしょう?やっぱり難しいんじゃないですかね?
で、もう1つは実際的な問題ですけれども。18歳で成人になりますと単純にタバコ・お酒解禁だけじゃなくて、納税・就労の義務が生じますよね?
今、非常に問題になっている児童虐待の問題があります。親子関係の絆がどうも希薄になってる感じが否めないんですよね。
その中でこれをやりますとですね、「もう成人だから家から出なさい」というプレッシャーが一部で高まる可能性が高いと思うんですよ。
まあ日本っていうのは世界的に見ても、成人した子どもが親と同居し続ける率が高い国なんですけれども。それが今後だんだん減っていくと。
それによって自立する人ももちろんいると思いますけれども、まあ18歳ですからね。すぐ社会参加できるとは限らないし、良い就職口があるとも限らないとなってくると、まあ路頭に迷ってホームレス化するとか、そういうけっこう厳しい状況が見える感じがするんですよ。
日本って今まで例外的にホームレスがすごい少ない国なんですよね。若いホームレスが1万人いない国って先進国ではあり得ないくらい少ないんですよね。
大竹
あっ、そうなんですか!
斎藤
そうなんです、すごく少ないんですよ。これがひょっとしたら増えるかもしれないという心配を少ししているところですね。
大竹
さっきの児童虐待なんかも18歳から選挙を出来ればね、結婚するのも成人が早くなるわけだから、みんな早く結婚してもいいよみたいな。
辺見
しちゃえみたいな。
斎藤
若い夫婦がまだ未成熟のうちに子どもを作ってしまって面倒を見れなくて虐待・ネグレクトみたいな方向も有り得ますよね。
大竹
でもアメリカなんかは18歳ですよね?
斎藤
まあその引き下げ賛成論者の方がおっしゃってるのは欧米並みにしましょうよと。だいたいどこも18歳だから、欧米並みにすべきと。
それはそれで良いんですけど、欧米と日本を比較して何がどういうところがメリットがあるか?ということを示して欲しいんですが、あんまりそれが示されないというか・・
成熟度は世界的に下がってますし今言ったようにアメリカ・イギリスではホームレスが増えてるわけです、若いホームレスが。
大竹
アメリカは増えてますか?
斎藤
増えてます。
大竹
えーとこの日本の前回もお話いただいた引きこもりなんですけれども、引きこもりは韓国もとても多いわけですね?アジアの中で日本も多いし韓国も多い。これはどういったことでこういう減少が日本と韓国と共通するんですか?
斎藤
条件がいくつかあるんですけど、1つ大事なものは家族主義といって家族一体で過ごすことが価値があると。日本と韓国と儒教文化で親孝行が素晴らしいとされる文化じゃないですか?
親孝行するときに同居しなくちゃいけないわけですよね?だから子どもは大人になってもなかなか出さないで同居し続けるのは、そういうカルチャーが背景にあるからと考えられるんですけど。
まあそれはだいたい30歳までの成人男女の7割くらいが親と同居しているというデータがあります。これは突出して高い日韓共に7割くらい。同居し続けているとですね、もちろんそこで仕事に就く人もいる。社会参加する人もいます。
だけどできない人もいるわけですよね。失敗した人はどこに行くか?っていったら家にこもるしかないわけです。ホームレス化する代わりに引きこもりになってると考えていただければ分かりやすいと思います。
大竹
でも国の方では介護もそうですけれども、自宅で介護をするようなかたちを国にお金もなくなって、デイサービスとかは受けられるんですけれども、それでも親を子どもが一緒に介護して、その上に介護離職しないようなことをやれと。
女の人はただでさえ大変なのに介護もしなくちゃいけないし、働かなくちゃいけないし、輝かなくちゃいけないし。
斎藤
ハハハ、輝くというのは本当に欺瞞ですね(笑)
大竹
大変な時代になっちゃったと思うんですけれども。
斎藤
もともとでも日本って高齢者とか子どもとかですね、今若者もそうですけど。弱者対策はそれぞれの家でやって下さいっていう国なんですよ、もともとね。
精神障害者もそうです、昔戦後間もなくまで座敷牢があった国ですから。昭和25年までありました。それもだから病院がないからお宅で見てねということなんですよね。
介護も親孝行の文化があるんだからそれぞれの家庭で見なさいという形でやってきたところなので、ようやく介護保険ができて若干状況はマシになったと言われてますけれども、まだまだ未成熟ではありますが。
今やっぱり若者が残っているわけですよね、若者に関しても本当は何らかの政策が必要なんですけれども。今のところ実質的には家族が世話をして見てあげているという状況なんですね。
大竹
そうするとやっぱり欧米並み見たいな若者が18歳で自立してしかもいろんな労働に耐えていくっていうのは日本のなんか古い風習の中にあって、
その家族単位で考えることがずいぶんたくさんあるのに働いて社会で成人になってみたいなプレッシャーを受けすぎるっていうことになるわけですか?
斎藤
そうですね、そういうところで悪い意味での欧米化がそこだけ進んでしまうと狭間に落ち込んでしまう人がけっこう増える感じがしますので、その欧米化の良いところも出てくればいいんですけれどもね。
大竹
はい、やっぱり今18歳以上賛成の意見がけっこう多くて・・。
斎藤
圧倒的に多いですね。ただ当事者は嫌がっているんですよ。
大竹
そうですよね?若いやつらは・・
辺見
突然言われても!みたいなとこですよね。
斎藤
「選挙権いらない」とか言ったり(笑)
大竹
本当のことを言えば若いやつらが「俺たちは早く大人にしろ!」とそういう意見が出て来て・・
斎藤
私もそれ言ってくれたら全然OKなんですよ。でも当事者嫌がってるじゃん!と。それがあるんですよ。
大竹
無理矢理ですよね?
辺見
「大人になれ!」つって。
大竹
ひっぺ返すみたいなちょっと意味合いが強いことは確かだよね。そうすると後々やっぱし負担は大きくなってきちゃうよね?
そしてその引きこもりとか日本でも多いんですけれども、その引きこもりの人の人たちがアートとか文化とか考えることとかいろんなことが狭い分野に追いやられている気がするんだけど?
引きこもりの人や何かにもそのアートみたいな文化はとっても有効だっていうふうに?
斎藤
まあ治療として有効かどうかは別として、やっぱり引きこもっているとどうしても世界が狭くなってしまいますので家の中でネットを見たりとかですね、そういう生活に偏りがちですから・・
まあせめてそういうアートや文学に接してですね。世界の多様性に接する機会があった方が社会参加への敷居は下がるだろうなという感じはあるんですけれども。
まあ文科省も人文系の学部を廃止とか・・まあデタラメでしたけど(笑)そういう噂があったり、まことしやかにそれが受け入れられたりとか。
どうもそういう人文的な教養みたいなものを軽視する方向に社会が進んでいるようで、それは非常にその社会の風景が貧しくなるんじゃないかなという懸念を感じますね。
大竹
そうですね、そういう日本の現状の中であって。さていろんなこともありますけれども。この「オープンダイヤローグ」とは何か?っていうことなんですけども。
これは先生がとてもショックを受けたっていうお話ですけれども。これは統合失調症それから引きこもり、あとうつ病なんかも含めてこの治療法が・・これは薬を使わないんですか?
斎藤
ほとんど使わないですね。
大竹
この治療法がかなり有効だと。まああの今お聞きの皆さんもお宅に引きこもってらっしゃる方もいると思うんですよね。これどういう治療法なんですか、これは?
斎藤
あの「ダイヤローグ」ですから対話なんですけど、要は治療者が複数でチームを作ってですね基本的なフォーマットは家までアウトリーチ、訪問するんですね。
訪問して、そこで治療チームと本人と家族・友人・知人・親戚そういった人が輪になっておしゃべりをするんですね、ひたすら。何をしゃべってもいいし、話したことは全部ちゃんと返事が返ってくるという空間を作るわけですけど。
その空間を作って対話を回していくと、いつの間にか治っているというですね。そういう(笑)簡単に言えばそういう方法なんです。
辺見
えーーっ!
大竹
でもそこまでで、例えば対象を引きこもりとしましょう。引きこもりの人がいました。まあうつ病なんかでも同じなんですけれども、いました。これを家族の場に、チームにみんなで参加させる。そこまでがとってもしんどいんじゃないですか?
辺見
嫌がりますよね、きっと。
斎藤
そうです、あのすごく統合失調症に使われたのが理由があって。統合失調症という病気が発病して直後はすごく混乱していますから、拒否する力もないんですよ。
大竹
統合失調症の場合はね。
斎藤
だから家まで行って、話し合いにスッとこう巻き込めるんですけど。おっしゃる通りでうつ病・引きこもりの人で「治療なんか受けたくない」という言ってる人に参加してもらうには少しハードルが高いかもしれないと思います。
例えば、引きこもりの人もときどき暴れたりするわけで家庭内暴力振るったりなんかするときが1つの危機的な状況なわけですけど、そういう直後に介入すると会えたりするんですよね。
ちょっと混乱を上手く活用するみたいな感じで。
大竹
なるほど、うつ病には?
斎藤
うつ病の人は引きこもりの人に比べて病気の意識がありますから、説得は割と通じやすいところがあって「なんとかこういう薬を使わない治療法があるからやってみない?」と誘導しやすいと思いますね、割と。まだ日本でやってませんから、分かりませんけど。
大竹
えーと、フィンランドではこの治療法はなぜこういうことが生まれたんですか?
斎藤
これ発達したところを西ラップランドのトルニオってところなんですけれども、一言で言えば僻地で貧しい地域なんですよね。
病院はケルペロス病院っていうんですけど公立病院で全然日本の私立病院みたいに豪華でも何でもないし医療資源がすごい乏しい地域なんですよね。
大竹
逆に、薬も少ない?
斎藤
薬もあまり潤沢には使えないようなところで。そういうところでどう良い治療をしようか?とスタッフたちが一生懸命考えて、家族療法の仕方とかですね。精神分析とかサイコドラマとかいろんな技法があるんですけれども。
それをああでもないこうでもない組み合わせて、この形式を作り出してやってみたらすごい上手くいくと。もうこれ30年間ずっとこれでやっているということなんですよね。
大竹
一時期なんか「箱庭療法」みたいなのありましたよね、日本では?
斎藤
よくご存じで、ありますあります。「箱庭療法」は箱庭を作らせるというんですね、半分心理検査を兼ねた治療法なんですけれども。まあちょっとそれとは系統が違うものということになると思いますね。
大竹
家族が参加してこの医療チームが参加して実際にこれ家に訪ねていくんですか?
斎藤
病院でやる場合もあるんですけれどもね、でも基本フォーマットは家に訪ねていってリビングとかで会話をするというのが基本になりますね。
大竹
引きこもりの人が例えば暴れたときなんかに上手く接点を見いだせる?
斎藤
そうですね、そういうときって本人もちょっと興奮していますし。まあ別の意味で気持ちも緩んでいますからそういうときに介入すると割とあっさり話が通じることもありますね。
大竹
それは何を話すんですか?
斎藤
えーと「何がしんどいか?」とか「何が辛いか」とか「普段どういうことを考えて暮らしているのか?」とか、何でもいいんですよ。話したいことがあったら何でも話しましょうと。
本人は最初なかなかしゃべらないと思うんですけど、それはそれまで自分の主張が家族とか周りとかに否定され続けてきているからしゃべっても無駄だと思ってるわけですよね。
だけど「あなたの話を聞きたい」という姿勢をしっかり示していくとけっこうふとしたときに口がほぐれてきてワーッとしゃべり出すんですよね。
大竹
ケースによってはでもけっこう時間のかかることですよね?すぐチームが行ってすぐそうなるわけじゃない。そうしたときにはそのチームとご両親とか引きこもりの人とかどのくらいの時間がそこにかかる・・?
斎藤
すいません、それはまだ日本で実施していないんでまだ分からないんですけど。もう1つ方法があるんですよ実はですね。
部屋に引きこもっていますよね?その場合どうするか?というと、ドアの前でその人の噂話をするんですよ。
そのドアのまで「この子はこんなことで苦しんでいるんじゃないだろうか?」とかですね。「でももうちょっと病院に行ってくれたら嬉しいんだけどな」みたいなことを噂する。
辺見
聞こえるように?
斎藤
聞こえるように。これけっこう効くんですよ!これ「リフレクティング」というんですけどねこの方法。
大竹
外でそういうのを話していれば「この子はこんなこと考えてるんじゃないだろうか?」って話してたら中でそいつが「違う!」って。
辺見
「待てーっ!」ってドアを開ける可能性が(笑)
大竹
「俺はそんなことを考えてないぞ!」と。
斎藤
おっしゃる通り、参加したくなるんですよ。その会話に。困っている人にはそれをやるといいんですね。
これ難しいのは、部屋の前でお父さんならお父さんが1人でぶつぶつ言うとダメなんですよ。ウザいと思われるだけなんですよ。
辺見
1対1だともうウザくなっちゃうわけですよね。
斎藤
やっぱりね、お父さんとお母さんが噂しているのがいいんですよ。まあお母さんじゃなくてもいいんですけど。治療者でもいいんですけどね。
大竹
いやその噂っていうのは例えば変な言い方で、ちょっと悲観的な話でもいいんですか?
斎藤
できればポジティブな方向で。
大竹
なるべくポジティブな話を。
斎藤
本人が聞いても構わない範囲で、ポジティブなお話を。
辺見
「心配しているんだよ」という会話を、「どうなんだろう?」という。
大竹
「美味しいカキフライ作ったんだけど、あの子好きだけど食べないのかね?」みたいな会話をすればいいわけ?
斎藤
全然いいと思います。
大竹
そういう会話でいいんですか?(笑)
斎藤
いやですからね、これある人が言っていたんですけど子育て荷物替えるんじゃないかと。
思春期の子どもがスネたらパパとママがね、戸口の前でやりとりすると言いたいことがすごく伝わるだろうと言った人がいて「なるほど」と思いましたけども。
別に患者に限らないってことですね、これは。
大竹
それはおじいちゃんの引きこもりでも同じことですか?
斎藤
いやー、全然。耳が聞こえれば大丈夫だと思いますよ、ちゃんと(笑)
辺見
聞こえていれば、ちゃんと。年齢関係なくあるかもしれないから・・。
大竹
関係なくそういうことって起こるわけで。まあ、うつ病の人も条件も一緒ですよね。
斎藤
人間の心理っていうのは面白くて、間接的な情報の方がリアルに聞こえるってことがあるんですよ。
「大竹さん、すごいですね」って言われるよりも「辺見さんが『すごい』って言ってましたよ」と噂で聞いた方が・・
大竹
俺、舞い上がっちゃいますよ!裏でそんなこと言われたら。
斎藤
嬉しいでしょ?(笑)
大竹
めっちゃくちゃ嬉しい!
斎藤
これを利用しているんですよ。
大竹
まあでもこの治療法っていうのはとてもシンプルでお金もなくて、系ザクも乏しいっていうところからフィンランドの中で生まれてきて。最初、先生がこれいつごろご存じになったんですか?
斎藤
2年前の「オープンダイヤローグ」という映画が公開されたんですよ。アメリカの心理学者が撮った映画だったんですけど、これが日本で上映されてたぶんそれで日本人が最初に知ったきっかけだったと思いますけれども。
私もたまたまそれを観まして「ああ、すごい!」とショックを受けまして。で、理論的な支柱になっているセイックラさんという人がいるんですけれども。
その人の論文を集めていろいろ読むうちに「こういうすごいものはぜひ日本に紹介したい」ということで、
編集者と相談したりとかして「ぜひ早めに紹介しましょう」と。「まだ日本語で読める文献が全然ないのでぜひ出版しましょう」ということで。
大竹
うつ病とかそれから引きこもりとかの場合には、今行われているのが例えば薬による治療法とかそういうのがとても多いですよね?
それは今の治療法だとすると、薬といろんな処方にもよるんでしょうけれども、いろんなそれの副作用みたいなことも生まれるんですか?
斎藤
もちろん副作用もありますし、「オープンダイヤローグ」自体は薬を否定するものではなくて、その病院でも一部の人には薬を出しているし、入院もするんですけれども。
やっぱり使う割合がすごく少ないっていうことなんですね。何でか?っていうとやっぱり統合失調症なんか特にそうですけど、薬を使うとですね辞めどきが分からない。いつ辞めていいか分からない。
大竹
まあ本人もね。
斎藤
本人も分からない、医者も分からないですよ。辞めたら再発するかもしれないと思って結局一生飲んで下さいみたいなになっちゃう人がすごく多いんですよね。
辺見
それは辛いな。
斎藤
これ非常にしんどいことで、病院を卒業できないわけですから。「オープンダイヤローグ」は終わりがちゃんとあるというところがすごいというところですね。
大竹
まあお聞きの皆さん、統合失調症に関してもそれからうつ病に関しても、引きこもりに関してもなるべく薬を使わずに会話をもって世の中に戻ってこれる方法がフィンランドではあって、先生がそれをご紹介したっていうかたちになるってことですか?
斎藤
まあそういうことですね。
大竹
でもとってもそれは朗報じゃないの?と僕は思います。
斎藤
もちろん万能ではないんですが、応用範囲がすごく広いと。フィンランドでまさか引きこもりがいると思わなかったんですけど、私が見学に行ったときは最初に見せてくれたケースが引きこもりだったんですよね。
(了)
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