今回は2016年1月26日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交友録」深澤真紀さんの回を
起こしたいと思います。
深澤真紀(以下、深澤)
先週から実は私のところに「深澤さんSMAP、『交遊録』でやらないんですか?」って言われて。でまあ芸能ニュースとしてやるのはちょっとあまりにも皆さんいっぱい見てると思うので。
今日は日本とアメリカと韓国のエンターテインメントのシステムからどうしてこういうことになったのか?・・
というのはですね、私自身も20年前に独立するときに出版界も割と古い世界なので作家のエージェントやマネジメント事務所を作ろうとして出版界で問題になった過去があるんですよね(笑)
まあそんなこともあるので、エージェントとかマネジメントについてはけっこう考えてきたんですけれども。まあ日本の芸能事務所っていうのは3つの機能を持っているわけですね。
まあ芸能プロダクションって言うぐらいですから、番組を制作する。もう1つはエージェント、「エージェント」っていうのは仕事の契約を取るってことですね。3つ目がマネジメントで本人の世話ですね。
で、アメリカはですねエンターテインメントのビジネスが世界規模であるということと俳優の権利を守るためにこの3つは分けなかればいけないという決まりがあります。
この3つが1つになってしまうと、やっぱり自由にならないんですね。特に大きいのはやっぱりこのエージェンシーというものが大きい存在で
トム・クルーズが昔「THE AGENT」っていう映画に出ていて、これ本当おすすめなのでご覧になるとよく分かると思うんですけど。
まあハリウッドには大手のエージェンシーがいくつかあって、渡辺謙さんとか浅野忠信さんなんかももちろんそこに所属してアメリカのお仕事やっているんですけど。
これはあくまでも個々に契約なので、所属タレントという感じじゃなくて顧客なんですね。エージェントにとってのクライアントが俳優なんですね。だから弁護士にかかるとかお医者さんにかかるみたいな感じで。
で、エージェントはその代わりに仕事を取ってきて、出来高でお金をもらいます。15%とか20%っていうふうになっているってことで。
しかもエージェンシーっていうのは監督や脚本家も所属しているんですね。だから例えば「俺こういうラブロマンスをやりたいんだよ」「SFをやりたいんだよ」なんて言ったら「じゃあちょっと脚本家と監督はどう?」っていうシステムがあったりして
まあ非常にエージェンシーっていうのが大きな役割を持っているので、エージェンシーの中のエージェントが自分の担当の人が独立するとか移籍するときにはそれについていくってことがけっこうよくあることなんですね。
じゃあ一方、マネージャーとかはどうするの?って言ったらマネージャーはまたマネージメントカンパニーっていうのがあるんですよ。そこからまた雇うんです。「あの人に現場についてきて欲しい」とか、そういうのは雇うし。
スタイリストとかヘアメイク、まあスタリストやヘアメイクは独自に雇う方、日本にもいらっしゃいますけど。独自に雇うし。あと一番日本とアメリカの違いは広報の人を別に雇うっていうことですね。
広報の窓口、だからどういうような取材を受けますとか。自分はどうやって発表するとか、だから離婚を発表するときもあれは広報が発表しているんですね、自分が雇った。まあ「パプリスト」とか言うんですけど。
とかあと弁護士も個別に。つまりあくまで自分が中心で倉田真由美という女優が中心でエージェント・マネジメント・スタイリスト・ヘアメイク・広報・弁護士。
もちろんこれ全部雇わなくてもよくて、エージェンシーしかやってなくてあと自分でやるよなんて人もいるんですけれども。
太田英明アナ
日本の場合は、タレントさんほぼ全部を事務所に委託してやっているという。
深澤
まあ楽と言えば楽なんですが、よく出来ていると言えばよく出来ているんですけれども。ブラッド・ピットとかディカプリオに至っては自分でプロダクションを持っていて、映画製作をしていたりする。
どうしてこんなに日本とアメリカの芸能界のシステムが違うか?というと、アメリカで一番有名なのがアクターズ・スタジオっていうね、これはもう俳優を養成するなかなか難易度の高い学校なんですけれども。
他にも養成所とか大学があるんですね。そこで学んでからエージェントに自分で送るんですよ。自分の資料とかオーディションを受けたりして。
しかももう一つ大きな違いはとにかく俳優の労働組合っていうのがこれ10万人以上加盟している労働組合があるんですけれども。これに加盟していないと仕事できない。
だからよくほら、必ず1日何食で夜5時までに仕事は終わらせてみたいにアメリカはすごい厳しいっていうのは、それはやっぱり労組がちゃんとしているので、っていうことなんですけど。
じゃあどうして日本の芸能界は全然違うのか?っていうと、一番大きな理由は日本は映画会社が戦後に松竹・東宝・大映・新東宝・東映っていうのがあったんですけど。
大竹まこと(以下、大竹)
五社協定
深澤
そうなんですよ!五社協定。もうね、大竹さんの世代の人は普通の人でも知っていたようなぐらいの。これ何か?っていうと、専属の監督と俳優は移っちゃいけない。だから実は小津安二郎にしても原節子にしても、みんな決まっていたんです。松竹なら松竹の映画しか撮れないし。
倉田真由美(以下、倉田)
ああ、そうなんだ!
大竹
東宝とか日活は出れない。
深澤
だからそれで困った日活が石原裕次郎さんみたいなスターを出して、だから「日活映画」って言うでしょ?ポルノじゃない方の「日活映画」ね。
っていうようなことがあって、これが五社協定とか日活が加わって六社協定。これ俳優の引き抜きとか貸し出しを禁止したんですね。
特にテレビが台頭してきたときにはテレビには映画の俳優は出さないと。その結果、何が起こったかっていうと舞台俳優がテレビに出たりテレビ局の専属俳優が登場して。まあ有名なところでは黒柳徹子さんはNHK専属テレビ女優第1号。
だから徹子さんは映画には出られなかったっていうような・・だけどそんなシステムをやっていたこともあって映画産業はみるみる衰退していったわけですよね?
つまりやっぱり松竹は松竹の役者さんしか出られないみたいなことになって。で、やっぱりテレビが面白いってなってテレビの役者さんは面白いってなちゃって昔は映画の人がテレビに出るのってたいへんな屈辱だったみたいな。
大竹
あとまあだから五社協定もあったし、テレビはちょっと下に見ていたっていうかね映画界から言わせると。それでテレビはどうなってきたか?っていうと、その使えないもんだからアナウンサーの人だとか新劇の役者さんだとかそれがテレビのドラマとかにけっこう出始めるのね。
それで隆盛を極めはじめてくると、もうだんだん五社協定がなくなっちゃって映画会社から「あいつがテレビに出たぞ」なんていう「石原裕次郎がテレビやるよ」なんていう話から。
倉田
ああ、思いっきり出てましたよ!
深澤
「石原プロ」とか作ったりして。まあとにかくすごいことだったんですよ。
大竹
そうなっていくと例えは変だけどジャクソンファミリーみたいなのがさ、5~6人いるじゃない?あういうのはどうなの?エージェントがいたとしても中でさ、グループ組んでいるといろいろあるじゃない?
深澤
内輪もめは日本以上にヒドいと思いますね。ビートルズだって結局あんなに早く空中解散してしまったわけだし。もちろん内輪もめはあって。
大竹
それはしょうがないの?
深澤
しょうがないわけですよね。ただ日本の場合はなかなか芸能事務所が全ての機能を持ってしまうから事務所のコンテスト・オーディション・スカウト、「見つけて育成して売るからお金がかかるんだ!」って。
もちろん悪い面だけじゃないと思ってて、っていうのは日本は芸能事務所のシステムがあるからこそ、よその国にはないアイドルとかバラエティータレントっていう芸じゃなくて「有りよう」を見せるタレントさんがいるのはやっぱり日本だけなんです。
SMAPはその象徴なんだけど、私は決してそれ自体は悪くはないんだけど。ただやっぱり自分でプロデュースできないとか、労組がなくて言いなりっていうのは非常に難しい。
韓国は日本の芸能界のシステムを真似たんです。韓国の芸能界が非常に難しいっていうのは皆さんもちょくちょく聞くと思うんですけど。
倉田
よくもめてますもんね。
深澤
一番有名なのは韓国のSMAP問題と言えば何しろ「東方神起」は2010年に解散して、これが2・3に分かれたわけですよね?で、2人の方が「東方神起」で、3人の方が「JYJ」になったわけですね。
残った方が事務所が大きいので、とくかくものすごい圧力がかかったんですよ。まあ映画は出られるんだけど、テレビの音楽番組っていうのは完全に事務所が押さえているから絶対出られない。
で、「JYJ」は前の事務所を訴えたんですよ。まず1回判決が出るんですね、罰金だと。でもそれでも改善しなくて今度、公取委にテレビ局に「活動を妨害したらダメだ」って命令を出すんです。
それでも改善しないんですので、とうとう何が起こったかっていうと去年韓国の国会で放送法が改正されて「絶対に圧力をかけてはいけない」といってなんと「JYJ法」って今言われているんですけど。
倉田
へえー!!
深澤
信じられないでしょ?つまり韓国は日本よりめちゃくちゃ遅れていると思ったら、やっぱりダメだと。なんでか?っていうと結局アメリカも同じなんですけれども、アメリカも世界に輸出するビジネスだからすごくシステムがちゃんとしているんですけど。
韓国もすごく早い時点から韓国以外で売ることを目的としたビジネスですよね?日本とか、タイとか。もうタイなんかすごいわけですよ、韓国のスターとか。
なので国内の不公平なシステムが残るのはいけないっていうことで、国の産業なんですね。エンターテインメントがアメリカと同じように。
大竹
だから変えられた?
深澤
変えられた、もちろん全体の状況は日本より悪いですよ。ただ国会議員の中にエンターテインメント担当みたいな人がいるんですよ。最近だと逆にニュージーランドなんかもロケ地としていろんなところのロケ地で20%国費を出したりするとか。
けっこう今エンターテインメントにお金を使うっていうのはやっぱり重要だってことになっていて。日本はもともとアニメとかマンガのサブカルがすごく人気があるわけじゃないですか?
それだけじゃなくて、アイドルの海外人気も高いんですよ。日本のアイドルってやっぱり特殊なので。今回も「SMAP嫌だ!」って台湾なんて日本より人気があったりもするので、彼らを目当てに訪日する人ってすごく多くて
私も何百人もアイドル目当てで日本に来た外国人に取材したことあるんですけど、私たちより詳しいくらい(笑)
だけど、そういうことを考えるとエンターテインメントやサブカルの表現者を育成するシステムとかプロデュースするシステムとか海外でビジネスを広げるエージェントみたいなことがやっぱりこの日本の芸能事務所の今の状況だとそれがすごく難しくなってしまう。
っていうのがもう1つの実は今回の件の問題だったりするんですね。
倉田
確かに外に売るっていうことをあんまり日本で考えてないかもしれない。
太田
ゆくゆくはアメリカみたいなシステムに日本も徐々にいずれはなっていくのか?それとも日本のシステムが独自のこのまま発展・発達を続けていくのか?って深澤さんはどう思いますか?
深澤
この間の謝罪でちょっと遅れちゃったっていう気はしますよね。あれがなければ、もしかしたらもう少し独自のシステム・・ただやっぱり思った以上に世論が動いてしまったので。
「これはおかしいんじゃないのかな?」ってのがみんなが思ってしまったので、ちょっとあまりにも昭和なシステムだなということで、しかもその日本の産業の1つでもあるのでね、エンターテインメントが。
これはもうちょっと変えていかざるを得なくなるのでは?・・まあ希望的観測も込めて(笑)
っていうのは、さっき言った出版界は本当に少しずつエージェントができてきて、エージェントが作家がここに所属して外国に売ったりするようになったりし始めてきているんですね。「宇宙兄弟」なんかそうなんだけど・・
大竹
野球界はフリーエージェントだね。FAを宣言できる。まああのシステムもずいぶん時間がかかったけども。そういうふうにはなったわけだよね。
太田
代理人の腕次第で年俸が全然違うっていう話ですよね。
深澤
やっぱり表現する人が主体になって自分のプロデュースができるっていうことが一番大事なので、「そうでないのかな?」っていうことを見せてしまったのはちょっと日本にとってはだいぶマイナスだったかなと思うので残念ですが・・。
大竹
でもあれだよね「一緒で良かった」っていう声もたくさん上がってるしな(笑)この辺が微妙なところだよな。
深澤
難しいところですよね。
太田
今後のSMAPの活動次第で「やっぱり言った通りだ」っていう人と「ああ、違った」っていう人といろいろ出てくるっていうことなんでしょうね。
(了)
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