山田五郎が語る「『STAP細胞』問題は松本清張ドラマなんですよ」
今回は2016年1月28日放送「荒川強啓デイ・キャッチ!」
「デイキャッチャーズ・ボイス」山田五郎さんの回を
起こしたいと思います。
荒川強啓(以下、強啓)
今日のテーマはこちらです。
片桐千晶
「STAP細胞問題の本質は科学ではなく人の欲だった」
山田五郎(以下、五郎)
これね、2014年に世界を騒がせたいわゆる「STAP細胞問題」で、不正な研究を行ったと咎められた元・理化学研究所研究員の小保方晴子さんの手記「あの日」がですね、
まさに華々しい発表記者会見からちょうど2年目にあたる今日1月28日に講談社から発売されました。税別1,400円です。これね、面白いんですよ。
先ほども言いましたけど、男たちのドロドロした欲望が渦巻く世界でね、とんとん拍子に成り上がっていった女性が一転して転落していくっていう松本清張ドラマなんですよ。
でこの多くのページを費やして主張しているのは、かつての小保方さんの指導者でもあり、それから共同研究者でもあった論文の共著者でもある現在山梨大学にいらっしゃる若山照彦先生への恨み節なんですよ。
この小保方さんの主張によるとですよ!以下、みんな小保方史観ですからね。小保方さんの主張によると、
彼女がハーバード大学のバカンティ研究室時代から研究していた本来のテーマは身体のそれぞれの組織、皮膚だとか心臓だとか、
そういうふうに分化しちゃった細胞に酸性の刺激やなんかを与えるとどんな組織にもなれる多能性細胞に戻ると。
そういう現象があると、これが後に「STAP現象」と呼ばれた現象ですね。この現象の存在を証明して、そのメカニズムを解明することだったんだと。これが私の研究だと。
だけどもそのために「STAP現象」でできた細胞が他のいろんなものになれるんですよってことを証明するために
当時、理化学研究所にいらっしゃった世界初のクローンマウスを作った第一人者の若山先生にキメラマウスを作ってもらったと。
ところが若山先生が作る過程でいわゆる「STAP幹細胞」って者を樹立ししゃってキメラマウスも作っちゃったと。更にどうもそれが「胎盤もできるらしい」みたいな話になったことで
いきなりこの「STAP細胞」っていうのは「IPS細胞を越える万能細胞なんじゃないか?」と。「すごいことなんじゃないか」と、ものすごい金も動くぞ!みたいなそういう期待も生まれちゃったんですよね。
で、その小保方さんが当初目指していたゴールを遥かに超えた、自分の思惑を越えた壮大な話になっちゃったと。
その結果、特許権やなんかの利権をめぐって、ハーバード大のバカンティ研究所と当時の理研の若山研究室で利害関係が生まれてきちゃう。
更に若山先生が山梨大学に転出されることで、その若山研究室・バカンティ研究室、理化学研究所。三つ巴の利権の取り合いになって。それはつまりキーパーソンである小保方さんの争奪戦になったわけ。
それははっきり書いてないんですけども。小保方さんが異例の経歴と若さで理化学研究所の主任研究員に採用されているのは、これはやっぱり理化学研究所はこの利権を手放さないようにするためだと。
で、若山先生は若山先生で山梨大学の助教授に誘っていたと。ハーバード大学のバカンティ研究所は「早くアメリカに帰ってこい」と言っていたと。取り合いになっちゃった。
だから彼女がハーバード大学のおかげでホテルに暮らしていたりとかっていうのも、やっぱりね、ハーバードはそこを押さえておきたかったっていうのがあったわけですよね。
そんなこともあって、その背景には京大の山中先生がIPS細胞でノーベル賞を取られたとか。それから東北大学で「ミューズ細胞」とかいろんな発券があったとかね。
それから理化学研究所が特定国立研究法人の認可を受けようとしていたとか、そういう大人たちのいろんな思惑がぐっちゃらぐっちゃらに絡み合ってそんな中でのあの華々しい発表になったということなんですよね。
ところがその直後、小保方さんによる間違った画像流用をはじめ数々のミスや問題点が指摘され始めた。
そうするとこれも小保方さん曰く、若山先生が手のひらを返したように保身を図って自分の身を守るためにいろんな情報をマスコミにリークしたりなんかして理研と小保方さんのせいにしようとしてきたと。
理研は理研で、やっぱり自分のところに傷がついちゃいけないからっていう保身のために小保方さんを切り捨てたんだということを言っているんですね。
でも彼女曰くですよ、その1回分化した細胞が刺激を与えることで多能性をもう1回取り戻すっていうそういう「STAP現象」自体はあるんだ!と。
実際その理化学研究所で監視されながら実験させられてましたよね?再現実験でもそれは起きたと言うてはるんですよ。
ただ、理化学研究所自体は「それは起きたかもしれないけれども、出現率が低すぎて再現に成功したとは言えないよ」というのもありますし。
あと科学的にもそれが何万個に1個かねそういう細胞が生まれたと言っても、それだけじゃ何も使えないですし「だから何?」ぐらいの話でしかないっていうことなんですよ。
でも再現実験で全く再現できなかったのは、幹細胞の樹立とかキメラマウスを作るという部分だと。この部分は私じゃなくて若山先生がやっていた実験だと、もともと。
私もやろうたって、できない実験だと言うんですよ。「教えてくれ」って言われたけど「そんなことしたら君がいなくなっちゃうと困るから」とか気持ち悪いこと言われて教えてくれなかったみたいなことも書いてあるんですけどね。
だから自分が全然関係ない、できもしない実験の再現ができなかったからって責任を取らされるのは納得がいかないっていうそういう主張なんですよ。
まあこの主張が本当ならですよ、小保方さんにも一抹の同情の余地はあるしね。若山先生も何らかの弁明や説明をする必要があるんじゃないかなとは思いますよ。
強啓
おやっ、グラグラッと来ましたか?
五郎
それで、けっこう良い文章なんですよ。ときどきちょっと可哀想になっちゃってホロッときちゃうんですよ、本当に。だけどやっぱり「いかん!いかん!」と。「親父はこうやってダマされるんだ!」と思うんです。
強啓
何と戦ってたのよ(笑)
五郎
いやいや、だってこの本読んですごい気になったのはね「ただただ涙が出た」とかね「どうすることもできなかった」っていう表現がやたら多いんですよ。何度も出てくるんですよ、これ。
つまりこの問題に対して小保方さんは未だに当事者意識が希薄でむしろ被害者意識の方が強いんじゃないかな?って思えちゃうんですよね。
で、この本を読む限り小保方さんって行く先々で先生方に異常なまでに可愛がられて異常なまでに優遇されているんですよ。
もうなんか知らないけど「やりたいです!」「明日から来ていいよ」だし。「お金がありません」って言ったら「なんとかしてあげよう」だし。異常なとんとん拍子で登って行くわけですよ。
そこで本人の努力と才能と人徳にもよるんでしょうけどもね。そのなんとかしてくれる先生が全員男性だったことを考えるとやっぱり意地の悪い見方も出てきますよ、これ。
強啓
ハハハハ・・はい(笑)
五郎
つまり、ちょっと可愛くてやる気と才能がある・・あるいはそう見せるのが上手い若い女性研究者がおっさんたちにチヤホヤされて経験も実力も身につかないまま、とんとん拍子にキャリアアップして
そのたまたま起きたおっさんたちの利権争いに巻き込まれてというか、乗じてというかもう自分でも思いも掛けないような地位に担ぎ上げられちゃったわけですよ。
そこまでは良かったんだけれども、なんせほら経験と実力が不十分ですからびっくりするような初歩的なミスをやらかして、それをきっかけに全部の責任を押しつけられて切り捨てられたっていう何度もいう松本清張ドラマですよ。
それは可哀想だとも思うし、酷な言い方かもしれないけど。でもそうなったのはやっぱり小保方さん自身もおっさんのチヤホヤに乗っかっちゃったというか、ちょっと自分に甘いところがあったからなんじゃないかな?っていう気がしちゃうんですよね。
本の中で指導教官でもあった理化学研究所の相沢慎一先生が厳しいことを言っているんですよ。「それはお前全部『身から出たサビ』だと怒られたっていうんだけども。
まあ確かにそういう部分もあったんじゃないかなと思いますね。何しろこの本読んで改めて思ったのはこの「STAP細胞」問題っていうのは科学の話じゃねえなって。
これはもう人間の欲の話ですよ!そっから見えてくるのは利権とか功名心っていった人の欲やね、ドロドロした人間関係ばっかりですよね。だから研究者っていうと浮き世離れしたイメージがありますけれども。
特にこの生命科学みたいに巨額のお金とか利権とか名声が絡んでくる分野の研究者っていうのはやっぱりお金とかそういう誘惑とか人間関係とかそういうことに対するマネジメント能力っていうのも身につけてないとエラいことになるっていう。
強啓
ああー!そういうことね。
五郎
「世間を全然分からない研究者です」なんて言ってる場合じゃないですよ。それはやっぱり巨額に税金が投じられたりするわけだし。ものすごいお金が動くわけですよ。
もしそれが現実問題、研究者にそこまで求めるのは酷だよっていうんだったら、やっぱりそういう研究者をコントロールできるいわゆるガバナンス。ガバナンスする人っていうのは第三者がやんなきゃダメだと思いますね。
だからこの理研の研究に限らず、日本ってやっぱり専門家はたくさんいるんだけど専門家をマネジメント出来る専門家、マネジメントの専門家が少ないですよね。
そういう人たちがやっぱりね、こんだけのお金と名声とかそういうものが動く研究機関ではそういう人がコントロールしないとダメだなという。おっさんたちに任せているこういうお粗末極まりない話になるなっていう。
強啓
ああ、そうなのね。
五郎
ちょっと読んでみて下さいよ。自分の古巣の本だから薦めるわけじゃないですけど。
強啓
いや、じゅ・・十分に僕、理解しました(笑)
(了)
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