今回は2016年2月2日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交遊録」深澤真紀さんの回を
起こしたいと思います。
深澤真紀(以下、深澤)
先日、講談社から小保方晴子さんが「あの日」という本を出されました。初版は5万部でとても売れていて重版がかかるだろうと言われています。
デザインは白地に黒の文字のみで、これ実は「絶歌」と同じ鈴木成一デザイン室なんですね。
なぜ1月30日に刊行されたのか?2年前の2014年1月30日があの「STAP細胞」の記者発表だったんですね。
なぜ「あの日」なのか?それは「私があの日に戻れるのならいつに戻るだろう?」「いつ戻ればこんなことにならなかったんだろう?」「いつに戻れても研究者になる」
もうこの時点で自分をかばう本であるってことが分かるんですけれども。本の構成は「はじめに」のみまず「です・ます調」でですね。「世間を騒がせてお詫びします」
「自分は論文は誰かを騙そうと思ってなかった、ただ図表の方法が常識から外れていて不勉強だった。責任を感じる。今までは発信を控えていたけど、やっぱり真実は書きます」
ここで関係者のお礼を書くんですけれども、ここで私の先生として何人かの先生を挙げているんですが。マウスを作成した若山さんの名前は書かれておりません。
つまりこの本は若山批判の本でもあるということですね。でもまあとにかく読みました。たぶん本人が自分で書いていると思います。
太田英明アナ(以下、太田)
若山さんっていうのは「STAP細胞」が発見されたっていうときの協同論文の執筆者の方ですよね?
深澤
そうですね、マウスを作られたっていうことなんですけれども。まあ非常に重要な方です。この研究に関して若山さんがいなければ進まなかった。
倉田真由美(以下、倉田)
ただ立場として筆頭研究者は小保方さんで間違いないんですか?
深澤
いやいや、これ論文が2つあってですね。1つはバカンティ教授と小保方さんが責任者で、もう1つは若山教授と小保方さんなんですね。
倉田
その2人は対等の関係?
深澤
そうです、対等の関係です。ですから、非常に研究の中心者ではあるのです。
倉田
この本レビューがものすごい極端に分かれてますよね。「すごく良い」っていう方と「とんでもない!」っていう方と超極端に分かれていてレビューを読むだけでけっこう勉強になるというか(笑)
深澤
なので今日はその極端なレビューの間をね、キチンとお話したいと思うんですが。それなりに確かに読めちゃうんですよ。
それはなぜなら本人はこういう真実があると思っているので、やっぱりそういうのって強いじゃないですか?なので読めてしまうんですけど。
とにかく本書だけ読むのは非常に危険なので、ぜひ本書を読むのであればこれからいくつかの参考図書をお伝えするのでそれもぜひ一緒に読んでいただきたいと思います。
で一番びっくりしたのが私、本文に写真も図版もないっていうことですね。他の類書は当たり前なんですけど必ず図版が載っているわけです。
なぜなら論文の図版の問題があったわけで、彼女が自分の潔白を証明したいのなら図版は載るべきなんですけど。ということは、科学者や研究者として論文の不正の真相を書いた本ではなくて・・
大竹まこと(以下、大竹)
すいません、初歩的な質問なんですけど、「図版」って何?
深澤
図とか表ですね。写真とか。
大竹
いろんなものがグラフになったり、それが図版っつうのね。
深澤
彼女の論文は図や表が問題になったわけですから、それについては要するに説明をできないっていうことでエッセイに近い。科学者の本としてはかなり特殊な本棚ということをすごく思ったんですね。
大竹
ああ、なるほどね。タイトルもね、そういうことだもん。「あの日」っていうタイトルだもんね。
深澤
ですから、全然科学的ではないんですね。しかも非常にびっくりしたのは,自分はだんだん研究の中心ではなくなっていって。たぶんそれは事実だと思うんですけど、実際若かったし。
まあいつの間にか記者発表ではだけど自分は中心に祭りあげられた。それも確かに事実だと思うんですけど、ただ騒動の原因はほとんどさっき言ったマウスを作った若山さんにあるんだっていうことをずっと言ってるんですね。
倉田
「ES細胞」が混入していたことについても?
深澤
そうです、だから「ES細胞」が混入させることができるのは若山さんだけだと。
倉田
ああ、自分じゃないっていう主張?
深澤
そしてこの本が一番衝撃的なのはですね、「STAP細胞はある」
倉田
未だに?
深澤
未だに言ってるんですね。なので本当にこの本だけをお読みになった文系の方は「この本には本当のことが書いてあるんじゃないか?」って思う方は多いのはすごく分かるんですよ。
なんか、いかにもそういう感じなことが書いてあるので、「そうなのかな?」って思うんですけど、ぜひ「あの日」を読んで面白いなと思われた方は猛1つの本と雑誌を読んでいただきたいんですけど。
1つが毎日新聞科学環境部の記者で早稲田大学で宇宙物理学を修士課程で学んでいて、つまり理系の方なんですけど、須田桃子っていう記者の方。
この人はですね「あの日」というこの小保方本の中では、執拗な取材をして自分を苦しめたと小保方さんが叩いている1人でもあるんですけれども。彼女が2014年12月に「捏造の科学者」という本を出してます。
これはノンフィクションの賞である「大宅賞」もとっています。これは時系列でどうしてこの発表がどんどんどんどん真実が暴かれていったのか?ということを、でも全然スキャンダラスじゃなくてかなり淡々と。
しかも全く小保方さんを一方的に悪者にしている本ではなくて「なぜこういうことが起こったのか?」ということを割と冷静に書いていて、これは非常に面白くて理研の問題を主に取り上げている。
倉田
第三者の目線からね。
深澤
そうですね、ジャーナリストとして。彼女は亡くなった笹井さんとも非常に近くて、若山さんとも近くてある程度理系の話が出来る記者だったのでかなり分かります。
もう1つはですね、もうちょっと理系寄りのことに興味がある方はですね「日経サイエンス」という雑誌が2015年3月に特集号を組んでいるんですね。
2015年3月に「『STAP』の全貌」という特集号を組んでまして。ここでは「幻想の細胞 判明した正体」っていう特集と「真実究明へ 科学者たちの365日」
これバックナンバーも取り寄せられますし、まあ図書館にあるので、これ非常によくできていて。「STAP細胞」がどうして「ES細胞」になったのか?っていうことをちゃんと理研の内部の研究者たちがもう解き明かしているんですね。
犯人は分からないですよ!だけどここで発表された「STAP細胞」はどこのマウスからとられた「ES細胞」かっていうことも実は分かってる。
倉田
それってやっぱり人の手が入ってるってことですよね?自然に混入はしないものなんでしょ?
深澤
まあ基本的には過失ではなくて故意であろうとは思いますね。というのはあまりにも数が多すぎるので、1個や2個だったらまあなくなないかもしれないですけれども。
倉田
その誰かは分かってないんですね?
深澤
分かってないですし、誰かを暴くものでもない。ただ若山さんは早くから理研から山梨大学に移っていたということもあって割と早い時点で距離があったんですね。
だから早い時点で論文を撤回しましょうとか、マウスおかしいっていうことを早くからおっしゃっていたんですね。
実際にマウスを作ったのも若山さんなので、そういう意味では小保方さんはたぶん彼のことは敵であるというふうに早めに認定したんだと思うんですね。
太田
もしもじゃあ小保方さんが言っていることが正しければ、その「STAP細胞」として「ES細胞」を混入させた人が若山さんで。問題が発覚した時点で「早く引き上げろ」と言ったのも若山さんだというふうに捉えていると?
深澤
そうですね、ただ現実的には若山さんは早い時点でこのマウスを調べているんですね。ですから、よくできたミステリーでそうやっている人が犯人みたいなことがないとは言わないんですけど。
ただ一番の問題は小保方さんはいろんな問題が起こっているわけですよね。例えば博士論文にこういう問題があったとか、この論文にはこういう問題があったとか。
それについて、ほとんど「ちょっとしたミス」だとか。例えば問題の博士論文の図表が違ったとかも
「違うバージョンをプリントしちゃったんだ」と「だけどデータはない」とか科学者に言い訳としてはちょっと聞けないような言い訳がほとんどある。
ただあまりにも強い口調で若山さんがいかにも自分に対して特殊な執着をしていて、それ故おかしな方にやっていったみたいなそういう口調になっているので
本人の中ではもしかしたらそれは真実かもしれませんが、ただ今まで出ている事実に関してきちんと説明をしていないという意味ではこの本だけを読むのは非常に危険であるということですね。
最近はYAHOOニュースにですね、元・理研にいらした西川伸一さんという方も論文不正について連載を始めていらっしゃって。この方に至っては小保方さんが今までの提出した論文をすべてちゃんと検証しようとされたり。
つまり科学者が何かを言うということは論文を検証するとかそういうことをしないといけないんですが、この本って後半はほとんど「悲しかった」とか「辛かった」っていうことばかりが書いてあるんですね。
ただ意味がないとは私は全然思わなくて、この本が全く意味がないとはもちろん思わなくて、
というのはこの記者発表までに小保方さんがどういうふうな学問的な背景があって、彼女学部時代と修士・博士時代が研究テーマが変わっているんですよ。担当教員も変わっているんですよ。
いろんな研究室にいるんですよ。これみんながみんなそうじゃないんですけど、そういう方もいっぱいいるんですけど。そうすると一貫して教育を受けられないというか・・
学部時代にきちんと受けられなかったものが、更に修士にいくと「ちゃんとやっているだろう」と思われるみたいな。
だから彼女のノートをきちんと見なかったとか生データを見なかったっていうのは転々とした教育のバックボーンなので誰も一貫して彼女の研究能力のバックボーンが分かってないんですよね。
倉田
ああ、なるほどね。
深澤
「ハーバードにいたことがある」とか「早稲田にいた」とか「理研でいた」とかっていうどっちっていうと経歴が先についちゃったっていうことで、皆が彼女を疑わなくなっちゃったっていう神輿がどんどん大きくなっていってしまった。
太田
いやーでも早稲田大学に入って大学院に入って修士論文通って博士論文入って理化学研究所でユニットリーダーになって、すごい発見の責任者になってっていう過程で誰も「おかしいぞ」って・・
深澤
まあ言えないですよね。
太田
言わないのも変・・
倉田
ちょっと考えにくいんですけれども。
深澤
でも言わなくなっちゃうんですよ、それはそれですごい分かるんですね。ただもちろんあともう1つはとにかくメディアがひどかったっていうのは本当にそうで。
やっぱりこの問題って若い女性であるっていうことがすごく問題で。彼女の人柄はすごく・・1人で立たれてたじゃないですか?メディアとかも。
「オボちゃん」とか「ああいう女は男に取り入る」とかそういう人格を否定する人もすごくいて、未だに「みそぎでグラビアに出ろ」とかさ、書く人必ずいるんですよね。
倉田
すいません、私もマンガのネタで似たようなこと書きました(笑)
深澤
まあ、くらたまさんはそういう人なんでいいんですけど。でもやっぱりそれは科学とは全く関係がない話で科学の話をそういう人格の疲弊にしたっていうことと・・
あと一番は理研がやっぱりそれに乗っかって、若い女性のスーパースターに乗っかって文科省から予算をつけてもらおうと。
だから大袈裟にしてしまって大袈裟にしたからやっぱりもっと早くに手を打てばこんなことにはならなくて。笹井さんも亡くならなくて済んだ・・
大竹
途中から後に引けなくなっちゃった。
深澤
そうですよね?だから科学と政治とメディアがごっちゃになっちゃったってとうのが今回の一番の問題で。
あと本当にマスコミって理系の人が少なくて。まあ新聞社の科学部は理系なんですけど、テレビ局とか出版社なんて理系がいないからもろ理系のダマされるトンデモ本とかオカルト本とかすぐ出すのもやっぱり出版社とかテレビはダマされやすい。
やっぱりちゃんと理系とか科学のことに・・しかも理系って言ったって広いんでね、工学の人が物理のこと分かるわけではないので。やっぱりそれなりに揃えていかないと。
今回、ある程度理系の記者がいるNHKとか日経BPとかですね、新聞社そかこれをちゃんと追えなかったので。テレビとか文系の出版社はこの問題に関してはあんまり役に立たない。
あと、理研と若山さん今回「ノーコメント」とおっしゃっていて、気持ちは分かるんだけどやっぱりコメントした方がよくて。
倉田
そうですよね!知りたい!
深澤
なぜなら若山さんは本当に悪者にされていて、もちろん研究者としての問題はあると思いますけど。やっぱりこの本についてはきちんと論文を・・
もちろん明らかになっていることなんですけど、改めて諦めずに「もうあれは『ES細胞』なのである」とかそういうことをきちんとおっしゃった方が良いとは思いますけどね。
倉田
大竹メインディッシュにいつか出てくることを・・
深澤
誰が!?
倉田
若山さん。
深澤
ああ、あの人は出られた方が良いと思います。
(了)