今回は2016年9月13日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交遊録」深澤真紀さんの回を起こしたいと思います。
深澤真紀(以下、深澤)
まさに今日もニュースになっていましたが、蓮舫議員の二重国籍問題。当初は本人は本当にたぶん違うと思っていたので否定していたんですけれども。調べて見ると父親の出身地である台湾・中華民国籍が残っていたことが判明して謝罪しました。
倉田真由美(以下、倉田)
今ごろ判明したんですね。
深澤
まあね、これ難しい問題なんですね。もちろんご本人の当初のメディア対応にも問題があったのは事実なんですが、ただ日本では国会議員や閣僚になるのに日本国籍はもちろん必要なんですけど、多重国籍ではダメだという法律はないんですね。
太田英明アナ(以下、太田)
法的根拠はない。
倉田
じゃあ別に今までも違法ではないっていうことなんですね。
深澤
ただ倫理的な問題はあるかもしれませんが。で、唯一あるのが外交官です。外交官は他国の利益を優先する可能性があるので人事院の規則で多重国籍者は任用されません。日本の法律で多重国籍の人がなれないのは、外交官のみということですね。
日本の国籍法は、一応国籍を選択して下さいという努力義務はあるんですけれど強制はできないということなんですね。というまず大前提があるんですけれども。
じゃあ国籍ってそもそもどういうものか?っていうと、国によって2つの考え方があってですね。1つは私たち日本のように親の国籍で決める、これが「血統主義」って言われているんですね。
それで皆さんもご存知のようにアメリカは産まれた場所で国籍を与える、これを「生地主義」っていうんですけど。だからよく日本人とか最近は中国の方なんかもハワイに行って子どもを産むっていうのが流行ってますよね?
倉田
ああ、聞きますね。お金持ちがね。
深澤
そうするととりあえず子どもが日本の国籍や中国の国籍とアメリカの国籍を持つことができるっていうことで。宇多田ヒカルさんなんかもアメリカで産まれたので当初は2つ国籍を持っていた。
今回のニュースで問題だったのは、二重国籍を批判するっていうこととそれ以外の問題を一緒にして批判していることが多かったんですね。
というのは、例えば何か?っていうと・・「蓮舫さんは途中で日本人になったのに首相を目指すのはおかしい」っていう方が多かったんですよ。
ところがね、蓮舫さんは確かに父親は台湾の人なんですけど母親は日本人。本人は日本生まれ日本育ち、ご本人は台湾語も中国語も話せない。日本語しか話せなかった。
大学時代に北京に留学してるので、それで中国語はできるようになったんですけれども。じゃあどうして蓮舫さんは日本国籍で産まれることができなかったのか?というと・・
当時の日本の国籍法は父親の国籍しか子どもの国籍に影響を与えることができなかったんですね。
倉田
えええーーっ!!
深澤
そう!知らないでしょ?でもね、これね極々わずか30年前です。1985年に国連が「女子差別撤廃条約」に基づいて日本はとにかく女性差別がいっぱいあったので「男女雇用機会均等法」とか一緒に国籍法も変えなさいって言われて。
それで85年にはじめて、父母のいずれかが日本人であれば日本国籍を取得できるようになったんです。
例えばもし、くらたまが当時の人だったが外国の人と結婚していたら、たとえ福岡に住んでいたとしても子どもが産まれたら日本国籍は子どもには与えられなかった。ほんの30年前のことなんですね。
で、この国籍法が改正されたことによって経過措置として20歳未満の子は特別に届出をすれば日本国籍を取得出来るようになったと。なので当時17歳だった蓮舫氏はこの届出によって日本国籍を取得した。帰化ではなく取得したんですね。
倉田
いま私の周りにママ友で国際結婚している人が何人かいますけど。じゃあ当時だったら日本国籍もらえてないんですか?
深澤
そうなんですよ。つまりこの蓮舫さんの問題は二重国籍以外の問題があるとしたら、昔は日本人の親がいて日本で生まれて日本で育って日本語がしゃべれても父親が外国人だったら日本国籍を取れないっていう・・
倉田
逆だったらいいんだ、日本人のお父さんと外国人のお母さんだったら日本国籍が取れてたと?
深澤
ところがさ、日本人のお父さんと外国人のお母さんでも婚姻をしていないことが多いじゃない?
倉田
まあ確かに周りを見回すと日本人のお母さんと外国人のお父さんっていう組み合わせに国際結婚の方が多いです。
深澤
よくこれ一番問題になっているのは沖縄ですね「アメラジアン」って言われていて米兵と日本の方が付き合って子どもが産まれるけど、米兵はアメリカに帰っちゃうから。だけどお母さんは子どもの国籍を取れないんですよ。
そういういろいろな大前提として実はほんの30年前まで日本人はそういう差別をしていた。これ有名なのは王貞治さんで、皆さんなんとなく王貞治さんって台湾?とかって思っていらっしゃると思うんですけど。
王貞治さんは母親が日本人で、やっぱり日本生まれ日本育ちなんですけど。お父さんが中華民国時代の中国人。台湾で産まれたんじゃなくって、中華民国時代の中国本土で産まれた人なんで中華民国籍だったんです。
お母さんしか日本人じゃなかったので。だから高校時代は国体に出られなかったし、今もその国籍を維持している。
倉田
ああ、そうなのー!?
深澤
それはやっぱりご本人にどういう思いがあるか分かりませんが、これが多重国籍が認められたらお持ちになったかもしれません。
で、国民栄誉賞を取るときに実はちょっと問題になるときもあったんですけど「国民が栄誉を与える人」だから「栄誉を受ける国民」という意味ではないので王貞治さんは取った。
太田
じゃあ今も中華民国籍?
深澤
そうですよ。意外とご存知じゃない方が多いんですよ。
太田
じゃあお嬢さんとか・・?
深澤
お嬢さんとかは日本人の方と結婚していらっしゃるので、日本の国籍を持っていらっしゃると思います。もちろんでも選ぶことはできたと思いますけどね。
あともうひとつは、とにかく戦後の日本は台湾・中華民国としか国交がなかった。中華人民共和国とは国交がなかったじゃないですか?72年に「日中国交正常化」によって台湾との国交がなくなったんですよ。
だから台湾の方も中華人民共和国の人間として扱われるようになったので、この中華民国の国籍を持っていることがそもそも日本の法律ではどういう扱いなのか?っていうのも実はすごいグレーゾーンっていう・・
非常に日本の差別だったり、戦後の混乱だったりというものの被害者のひとつでもあるってことなんですね。
更にもうひとつの蓮舫さんを否定する人の中に「なぜ『蓮舫』という中国風の名前を残すのか?」と。彼女は日本人と結婚して戸籍名は「村田蓮舫」なのにSNSでは父親の苗字である「@renho_sha」を使っている。
「おかしい!日本人の自覚が足りない!」とか言う人がいるんだけど。保守の議員で夫婦別姓に反対している人たちであっても、戸籍名を使ってない人がたくさんいるわけですよ。
もともとの名前を使ったり、芸名のままは男性でも女性でもいて。これは名前は議員にとって重要なものなのでね。蓮舫さんは『蓮舫』って名前で私たちは知っていたわけだから。
それが中国語風なのか、日本風なのかとかいうことはどちらでもよくて。もちろん「そのまんま東」さんにね、さすがに「そのまんま東」で知事になるのはどうかな?って(笑)
でも横山ノックさんは「横山ノック」のまま知事になってますからね。だから名前っていうのはあくまで政治家の自分の判断なので、っていうこの2つが蓮舫さんはちょっとむやみに否定され続けていると思うんですね。
あと私たちってもうひとつ問題があって、すごく日本人を自分の都合のいいように考える傾向がある。これどういうことか?っていうと最近ミスコンの日本代表で父親か母親が外国人の方が選ばれるケースがいくつかありましたよね?
倉田
ああ、ありましたね。
深澤
そうするとルックスが私たちの思う日本人風ではないので、そうすると「日本代表とはいえない」とかいう人たちが出てくるわけ。なんかやっぱり日本女性にはこうあってほしい!みたいな、ちょっと色が黒いのはどうなのか?とかね。
「日本人じゃん」っていう話なんですけど。ミスコンでは文句を言うくせに。今回のリオ五輪、父親か母親が外国人の日本人選手めちゃくちゃ活躍しましたよね?
倉田
活躍しましたねー。
深澤
そのときに日本人は何を言うか?私もうこれ大っ嫌いな言葉なんですけど・・「あいつは日本人以上に日本人だ」とか言うでしょ!?ものすごい失礼な話でしょ!!
その人のお父さんやお母さんにアフリカだったりアメリカだったり他のアジアのアイデンティティがある人たちに褒めてやってるつもりなんですよ!「あいつは日本人以上に日本人だなあ、○○選手」とかって言って。
だけどミスコンの代表の人は嫌なの、なんか他の国の血が入っていたら嫌なの。もう非常におかしいし・・
太田
まあ、ご都合主義(笑)
深澤
ご都合主義なんですよ。お相撲の世界とかでも親方は日本の国籍がなくちゃいけないから、白鵬関はモンゴル籍にものすごく愛情がある。あれだけの横綱なんだけどやはり日本の国籍がないと年寄名跡を取ることが今のところできないとかね。
もっと日本人が図々しいなって思うのは、ノーベル賞を日本の方がたくさん取っていらっしゃるんですけど。南部陽一郎さんと中村修二さん、この方はですねもうアメリカ国籍をお持ちなんですね。
なんだけど「日本人が3人取った!」とか日本人が何人取ったとか言って、じゃああなたたちがそんなに言うのなら、あの人たちは日系アメリカ人であると。
日系アメリカ人なんだけど「日本人が3人取りました」今までで十何人日本人は取ってますって、そのうち2人は日系アメリカ人だからっていう、もう本当にご都合主義で。
私たちの都合のいい日本人を期待しているわけですよね。だから蓮舫さんだって「蓮子」とかって名前にしたら「日本の心が分かってる」「日本人の心を・・」村田蓮子とかだったら私たちは喜ぶわけですよ。
おかしな話で、グローバルとか言っているんだから。で岡田(克也)さんがすごくいいことを言ってね「台湾にルーツがあって女性が代表戦に出ることは、民進党の多様性を表すことなのだ」っておっしゃったんです。
蓮舫さんに「つまらない男」と言われながらも、岡田さんはいいことを言って全然つまらなくない。いいこと言ったなと思ったんですけれども。
今回このことがあったので日本維新の会とかがですね、「多重国籍者は国会議員にするなという法律を出す」とかって言って、超イキイキしているんですけど。
そもそも世界の流れは多重国籍を認める流れです。アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・イタリア・カナダ。いわゆる「G8」の国ってほとんど多重国籍を認めているんですね。
更に国籍条約っていう条約は、国際結婚で産まれた子どもは二重国籍を認めなければいけないって逆に言っているの。つまりはお父さんのルーツとお母さんのルーツのどっちかを選べというのはおかしいじゃないですか?
っていうようなことに世界は変わってきているんだけれども。なんか私たちはいきいきとですね・・やっぱり蓮舫さんが気に入らなかった人たちも多いというのはあると思うんですよね。
ただ今までは台湾は親日国だからっていって、ちょっと見逃していたのをちょっとイキイキして国籍によって叩き始めてきたんですけれども。結局ノーベル賞のときはアメリカ人でも日本人っていうとかね(笑)
オリンピックに出てくれたら「日本人より日本人らしい」って言うとか。そういうふうに恣意的にするのであれば、日本にルーツを持つ人たちは日本人なんだっていうふうにきちんと多重国籍を認める流れにしていく方がいいと思うんですよ。
倉田
まあ本人の自由意思で決めればいい話ですよね。
深澤
やっぱり多くの人はどっちか選ぶのはものすごい苦しいの。お父さんを否定することになるとか、お母さんを否定することに・・・だから「離婚するときにどっちについていく?」みたいなことじゃないですか?」
なので少なくとも両親の国籍をどちらかに選ばせるっていうのは、世界の流れの中ではかなり逆行しているということですね。
太田
これでも整理していかなきゃいけない問題ではありますよね。例えば国のトップが二重国籍だったときにその国と揉めたときに「おいっ!」っていうふうに避難する向きもあるでしょうし。
倉田
あとやっぱり自国の利益だけを本当に考えてくれるのか?っていう懐疑的な見方をする人たちの気持ちも分からなくはないですから。
深澤
でもあえて二重国籍を持っている人がわざわざそんなことをしたら、よっぽど叩かれるわけですよ。本当によその国に利益を持つようなスパイ的なマインドの人は関係がないようにするのがだいたいスパイの人たちなので。
どちらかというと、だからこそきちんと付き合おうというふうになりがち・・まあアメリカなんかはまたちょっと閉鎖的になっているので多重国籍者を大統領にするなとか、オバマなんかはいろんなカルチャーがあったのでそれで叩かれたりしたのもあるんですけど。
ただ世界の流れとしては少なくとも父と母の国籍を両方持ち続けることを否定するのはやめよう!というふうにはなっています。
(了)
今週の人気記事
- 安住紳一郎が会ってきた「名古屋場所の白鷺の姐御」
- 宮台真司が語る「最近のナンパのやり口にもの申す!」
- 松本明子が語る「4文字事件の翌日は社会面です、一般紙の」
- ダイノジ・大谷ノブ彦が語る「大谷ノブ彦って良いパーソナリティでしょ?」
- 宮台真司が語る「オンナはもう、オトコに顔を求めない」
- 樹木希林が語る「大竹さん、折角来たので質問していいですか?」
- 安住紳一郎が語る「ここに来て『白鷺の姐御』という名前がドンピシャですね』
- カンニング竹山が語る「芸人を諦める年齢が上がってきた」
- 大森靖子が語る「自分は風俗資料になりたいと思っているので自分と一緒に歌詞も古くなっていけばいい」
- 山田五郎が語る「ビリケンの知られざる物語」
関連コンテンツ
自己紹介
ラベル
ゴールデンラジオ
(92)
デイキャッチ
(50)
たまむすび
(36)
Session-22
(31)
キキマス!
(31)
タマフル
(21)
キラ☆キラ
(20)
Dig
(16)
以外
(16)
日曜天国
(14)
ももいろクローバーZ
(9)
深夜の馬鹿力
(7)
SUNDAY FRICKERS
(6)
起こし・オブ・ザ・イヤー
(6)
ビバリー昼ズ
(5)
ラジオはたらくおじさん
(5)
白鷺の姐御
(5)
夢★夢engine!
(4)
学問ノススメ
(4)
ザ・トップ5
(3)
シネマハスラー
(3)
メキキの聞き耳
(3)
ラジカントロプス2.0
(3)
日曜日のそれ
(3)
おはパソ
(2)
サタデーナイトラボ
(2)
ワークショップ
(2)
東京ポッド許可局
(2)
週末TSUTAYAに行ってこれ借りよう
(2)
JUNK
(1)
くにまるジャパン
(1)
すっぴん!
(1)
アメリカ大統領選
(1)
オールナイトニッポンゼロ
(1)
不毛な議論
(1)